年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
全て切り終わったらしい大輔くんが、シャンプー台に案内してくれる。


その間に辻井さんが床に落ちた髪を箒で集めていて、寄せ集められるとこんもりとした黒い山が出来上がっていた。
改めて随分切ったんだなとその量に驚いていると、視線に気付いた辻井さんが私を見て言った。

「捨ててしまいますけど、その前に記念に写真でも撮っておきますか? もうこの量はなかなかお目にかかれないと思いますけど」

長い間自分の一部であったものに感慨がないとは言わないけれど、それはもう過去の自分だ。記念に残しておきたいほどのものでもない。


「いいです。捨ててください」


すぱっと言い切った私に、ふ、と目を細めて、辻井さんはわかりました、と頷いた。
この人のこの笑い方は、ちょっと危険だと思う。女の子なら根こそぎ陥落しそう。


シャンプーが終わって席に戻って、大輔くんが私の髪を乾かす。
やっぱり彼の指は気持ち良くて、乾かされながら眠くなってしまう。ゆるゆる溶かされていくような気持ちになるのは、ただ単に乾かし方が上手いからなのか、それとも彼の手だからなのか。


乾かし終わって入念にチェックして、大輔くんが手を離す。

鏡の中に映っていたのは、今までよりも少しだけ幼くなったような自分。

肩先より少し先くらいまでの長さの髪がきれいに内巻きに入っていて、長めに残された前髪は少し横からサイドに流されていた。
仕上がりにも全然問題があるようには見えないし、私にきちんと似合わせて、かつ少しだけ、印象を変えてくれている。


肩で風を切って歩いているような強いイメージから、ほんの少しだけ、女の子、という部分が前に出てきた気がする。


今までの私に圧倒的に足りなかった部分。
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