年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
後ろの髪も手元の鏡を使って私に見せながら、いかがですか、と大輔くんがまずは私に向かって聞いた。

「すごくいいと思う。ありがと!」

本気でそう思って、大輔くんのほうを振り向いて礼を言うと、ちょっと緊張気味だった表情がふっと和らいだ。それから辻井さんのほうを見て、今度は自信有り気に尋ねる。

「どうですか、タケさん!?」

辻井さんはそんな大輔くんを見て少し目元を緩ませた。

「全体的なスタイルは合格。片桐さんも満足そうだしね。……でも細かい部分がまだまだ不合格。基本が甘い。トータルで六十点、てとこかな」

大輔くんの顔が見る間にしゅーんとしょぼくれた。だらんと垂れるしっぽが見えるようで、思わずなでなでしたくなる。

「何っ回も言ってるけどスライスの取り方が甘いんだよ。グラとレイヤーの違い、きちんと理解してるか?」

今度は辻井さんが私の髪を触りながら、実践で解説していく。

私には完璧に見えた髪型も辻井さんから見ればやはり手直しが必要なようで、ところどころハサミが入れられた。
ラインがどうとかフォルムがどうとか、私にはさっぱりわからなかったけど、大輔くんはいちいち感心したように頷いていた。



手直しし終わった髪型は、私には違いがあんまりわからなかったけど。

「うう、なんで俺じゃこのライン出ないんだろう……」

大輔くんが悔しそうに唸っているあたり、やっぱりなにか違うんだろう。技術職の世界は、奥が深い。
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