年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
『今日の夜、ご飯どうかな? 遅くなってもいいよ』
メッセージを送って、携帯をしまう。きっと見るのは遅い時間だろう。
私も片付けてしまいたい仕事があるし、返事がくるまで会社にいてもいいかもしれない。
それから生地見本と格闘して、溜まっていた書類仕事を片付けているうちに、次々と社員が帰っていった。
いつも一番先に退社するのは絵里ちゃんだ。契約社員だから基本残業はしない。その分家で勉強している、ことになっている。
細かい書類に神経を遣って、疲れたな、と思った頃には同じ部屋の人はみんな帰っていた。
そういえば今日は月イチのノー残業デー。
んー、と伸びをして、携帯を取り出して確認するけど、大輔くんからまだ返事はない。そろそろ会社を出ないと、と思いつつ、ギリギリまで粘るかと一旦画面を閉じて、机に置いたままコーヒーでも入れようと給湯室に向かった。
お湯を沸かしながら、自分のマグカップを取り出す。
ぼんやり沸くのを待っていたら、誰かが近付いて来るのを感じた。
「お疲れさまで……」
顔をあげると立っていたのは祥裄だった。
浮かべかけていた笑顔をすっと引っ込める。こいつに向ける笑顔なんてない。