年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
私の部屋に置いてあった祥裄の私物は、まとめて宅配便で送りつけた。
誕生日や記念日にプレゼントされたものも全部入れた。
あの日つけていたダイヤのネックレスだけは、どこかで落としたらしく見つからなかった。お金に目がくらんで売っ払ったと思われそうで癪だったけど、ないものは仕方がないと諦めた。


その数日後、今度は祥裄からも同じように荷物が送られてきた。私が贈ったものは覚えている限り全部入っていて、それがまた癪だった。


言葉のないやり取り、それで全部終了したんだと思った。
少しだけ寂しい気持ちになったのは、きっと気のせいだ。



「なんか昔のお前を思い出すな。必死だったよな、お互い」


ようやくお湯が湧いて、マグカップにセットしたフィルターの上にお湯を注ぐ。ふわりといい香りが漂って、私の苛立ちを少し鎮めてくれる。

今更昔話なんて持ち出してきて、一体何が言いたいんだろう。


「あの頃のお前、すっげえ可愛かった。一生懸命で、精一杯で」

「……」


「仕事中は弱音は絶対吐かないけど、裏じゃ悔しくていつも泣いてたもんな。なんか守ってやりたいな、って思ったんだ。
それがいつの間にか強くなって、もう俺の助けなんかいらなくなってたけど」

「……」


「俺たち、なんでうまくいかなくなったんだろうな」


それを、この期に及んで言うか、と思った。

少なくとも私はあの時まで、うまくいってないなんてこれっぽっちも思ってなかった。
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