恋する白虎
どうしよう。

でも、傷つけたくない。

杏樹は俯いた。

「お前さ、もしかして、困ってる?」

驚いて顔を上げると、慶吾の寂しそうな瞳とぶつかる。

「俺が杏樹を嫁さんにしたいなんて言ったからさ」

慶吾は続けた。

「お前、もしかして好きな奴でも、いんの?」

杏樹は、静かに頷いた。

慶吾はホッと息をついてから、杏樹の頭にポンと手を置いた。

「そっか」

それから窓の景色を見つめたまま、静かに口を開いた。

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