あなたの一番大切な人(1)
 彼女は、国王に並ぶほどの長身の持ち主で、立ち上がった王のあごほどの身長があった。

 「さっき、小さな小瓶を持ってただろ。あれ、どうして手に入れたか思い出せるか?」

 彼女はいきなり彼を見据えて小さな声で話し出した。

 先ほども何度か聞いた声のはずだが、まるで天使が小鳥に話しかけるような優しさあふれる強い声だった。

 彼はぼんやりと彼女を眺めていたが、そんなことは露知らず彼女は続けて話し出した。

 「どこで手に入れたかは酒場だろうけど、あれはな、ただの液体じゃないんだよ。最近出回り始めた厄介な代物で、まぁあれだ…麻薬なんだよ。」

 彼女は長い髪を緩く束ね、乱れた前髪を整えながら続けた。

 「あれ全部をいっぺんに飲んだら、一気にあの世に逝く危ない代物でな。最初は一滴を何かに混ぜて飲むことから始まるんだよ。で、気持ちいい気分に囚われて、何もかもが楽しくてしょうがないんだ。でも、そこから地獄がはじまる。まぁ一種の禁断症状といわれるやつで、そうなったら...」

 「おまえ、女なのか?」

 我に返った彼は、無意識のうちに言葉を発していた。

 つい先ほどまで小瓶や憲兵のことで頭がいっぱいだったはずなのに、目の前にいる女性、しかも自分と歳もそれほどかわらない端正な顔立ちの女性に全てを奪われてしまったような衝撃を受けていた。

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