あなたの一番大切な人(1)
 いきなりぶしつけな質問をされた女性は、見るからにムッとした表情を見せ不快感を露わにした。

 両腕を組み、一度つま先で床を鳴らすと静かに口を開いた。

 「助けてもらった相手をいきなり<おまえ>呼ばわりするのが、おまえの育った環境のならわしか?
 酒場に見慣れない顔がいたから助けてやったのに。旅人かなにかだと思うけど、おまえはさっきの自分の状況がわかってないのか。
 危うく憲兵に捕まり麻薬の売人にでもされるところだったんだぞ。
 それを助けてやった命の恩人がこの、わたし、だ。」

 よほど根に持ったのか、”おまえ”という言葉を散々繰り返し、彼女は侮蔑のまなざしを向けた。

 国王は小さくため息をはき、頭をかいた。

 確かに、先ほど酒場で顔見知りの奴に連行されそうになり、それを助けてくれたのは見ず知らずの女であった。

 彼女の言う通り、感謝の気持ちを述べるべきだとは思うが、なかなか次の言葉がでてこない。
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