あなたの一番大切な人(1)
 そこは先ほどの静寂な空間と異なり、たくさんの人の話し声があふれていて、しかも頭が割れるほどの強烈な匂いがした。

 それが食べ物なのか感覚で感じるものなのかはわからなかったが、気持ち悪さが付きまとっていた。

 先ほど頭をなでてくれていた老人はその場にいず、かわりに短髪で無精ひげの多い男が力まかせに私の髪を絡めとっていた。

 徐々に意識がはっきりとし、視野が開けてきた。

 目の前の男が、半狂乱な笑みを浮かべながら汚い手で私の黄金色の髪を掴みあげ、目を逸らそうとしてもその度に顔を持ち上げた。

 下を向くと、薄く淡いカーキ色のチュニックがはだけ豊満な胸元があらわにされ、丸くて大きな2つのふくらみが勢いよく上下にゆれているのが見えた。

 さらにその下では、引き締まって筋肉質な私の艶めかしい両足がたやすく持ち上げられていた。

 壁を支えにしながらも激しい運動を強制されている状況に気が付いた時、生々しい触感が身体を這いずり回った。

 相手の男が自分の上で、むき出しの欲望をはけだしたとき、私はそのおぞましい感覚に耐えられなくなり、声にならない悲鳴を上げた。
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