短編集『秋が降る』
死にたくない。

死にたくないよ。

それでも、もう逃げる気力なんて残ってない。


ガチャッ


ドアの開く音が聞こえた。

いよいよだ・・・。

これで私の短い人生が終わるんだ。

「飯野さん?」
その声は、杉浦先生。

「・・・はい」
顔を動かすこともできずに、天井を見たまま答える。

「気分はどうですか?」

「・・・」

丸椅子に腰かけた杉浦先生が視界に入る。

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