夫婦ですが何か?Ⅱ
裸の体に彼の衣服が掠めるのがくすぐったいと感じ、軽く目を細めて耐えていく。
触れた首筋から徐々に余韻を残しながら下降して、かかる息と舌先の刺激にいつの間にか止めていた息を吐いた。
気付かれないように。
そして暴走的な行為に非難するように名前を響かせる。
「・・・っ茜・・」
『何?』
そんな視線が下から私を見つめ上げて、何にも問題ある事はしていないと言いたげに私の胸の先を口に含んで軽く歯を立てた。
悔しいかな・・・・、不本意でも・・・・、
気持ちいいとか感じる私もどうだろう。
それでも感じるような声も表情も内側に、無表情の仮面を纏って与えられる刺激に身を任す。
舐めて吸われて、器用な指先は私の肌を遊ぶように滑って。
困るほど誘いの上手い男だと思って心で舌打ち。
そして響かせてみる、私が上げていた条件を。
「【別居】中・・・性的関係は受け付けないと申し上げましたが?」
「・・・・・別居なんてしたくない。・・・・千麻ちゃんに触ってないと死んじゃいそう・・・」
そんな馬鹿な。
理論的にも生物学的にもあり得ないだろう?
多分・・・。
そんな真面目な言葉を頭に浮かべて、ぼやける芯が快楽に酔いしれたいと悪い堕落を私に持ちかける。
本当はもう怒ってはいない。
単なる意地も交じっての拒絶だし受け入れてもいいのではないだろうか?
そんな意思の弱さも浮上しかけて、それを煽るように下腹部に触れる彼の指先。
もう反対の指先が私の唇に触れて甘い声さえも誘ってくるような。
感触を確かめるように唇の上を遊ぶ指先がもう十分だと静かに頬に移動して、それを追う様に視線が横に逸れていっていたのに。
スッと陰った自分の目前に、視線を急いで戻して絡んだ緑。
そしてすでに捉えられない唇が切なげな声を私に向ける。
「我慢できない・・・・」
ほら・・・やっぱり・・・。
そう詰りたくなるような本心を漏らした彼が言葉のままに顔の距離を埋めて寄った。
得る感触。
それに何だか懐かしさと新鮮さと言う矛盾を感じて口の端を上げる。
そして・・・
「・・・・出直し・・・」
「っ・・・痛い・・・デジャブ感が半端なく痛いよ千麻ちゃん・・・」
泣きそうな声の響きを指先に感じて、そのまま軽く近づいていた唇を押し返した。