夫婦ですが何か?Ⅱ
危うく許してしまいそうだった自分を何とか理性的に保って一線を引くと、当然不満そうな彼の視線が諦めきれないように絡んでくる。
でも・・・関係ないですが。
「退いてください。本当に風邪を引きます」
「・・・本当に・・・今夜は別の部屋で寝るの?」
「何を言ってるんですか?」
「あっ、やっぱり脅し!?」
「【今夜】ではなく【今夜も】です。何1日で私の感情うやむやにしようとしてるんですか?」
「っ・・・お願い~・・・・出ていかないで~・・・」
「・・・・大概にしないと本気でこの家から別居しますよ?」
トドメの一言はさすがに前者の言い分より強力だったらしい。
その一言であっさりと扉の前から退いた姿にもっと早くこう言えばよかったと思ってしまうほど。
やっとその身を解放されたとスライド式の扉をカラカラと開けて、癖と言うほどでもなく顔に触れた髪を耳にかけようと指先を伸ばし触れた瞬間。
ああ・・・・忘れていた。
指先に触れた金属触。
彼らしい謝罪の形。
そうしてゆっくり振り返って彼を確認すれば私には背中を向けたままいじけている様に不動になっている。
それとも・・・どうしていいのか身動きが取れない?
困った・・・男。
フゥッと息を吐くとようやく解放されたその身を再度洗面所の方へ向き直す。
そうして自分の目線の位置ほどの彼の首根っこを乱暴に掴むとグイッと引いた。
「っ・・うあぅっ!?」
間抜けな声ね・・・。
予想外の襲撃に完全に怯んだ彼が焦ったように振り返って、その姿を案外簡単に壁に追い詰め見上げる。
グリーンアイが困惑で揺らめくのをじっと見つめ、不意に眉根を寄せると不満を漏らした。
「・・・馬鹿みたいに高身長ですね」
「ば・・・馬鹿って・・・千麻ちゃんがちまっこいんじゃ・・・」
「ダジャレですか?」
「そんなつもりなかったから指摘されてめっちゃ恥ずかしいんだけど・・・」
「ダーリン・・・」
「・・・・・はい、」
多分彼は緊張した一瞬。
私の不機嫌の健在に完全に怯えている現状だから、『ダーリン』という響きでさえ今は恐怖の対象なんだろう。
次はどんな嫌がらせが待っているのか?
そんな不安でしょ?
そして私は期待を裏切らない女ですから・・・・最大限の嫌がらせよ。