夫婦ですが何か?Ⅱ
心でつぶやいた言葉締めにニッと口の端を上げてみせ、次の瞬間には出来る限りのつま先立ちで、【馬鹿】みたく高身長の彼の唇に噛みついた。・・・・ような、キスをした。
自らぶつけて、捕食するように貪って。
呆気にとられ意識が追い付かない彼を好都合に、欲求不満の解消とばかりに望むままのキスを繰り返して。
でもそこは彼。
私と対等な性欲抱く彼がいつまでも呆けている筈もなく、意識が追い付けば挑むようにキスに答えようとしてくる。
そっと引き寄せるように背中に回った手が、背骨の位置に到達するより早く自分の身を引いて。
より深く重なり求め始めた彼の唇から余韻も残さずパッと離れてかかとを床につけた。
最後に自分の唇に残った味を確かめるように舌で舐め、ニッと微笑み上げると笑ってしまうほどの彼のもどかしそうな表情。
「っ・・・何で?」
「私も人並みに感謝の情は持ってますから」
「はっ?」
意味が分からない。と表情を歪めた彼に無言で髪留めを触って見つめ返す。
その仕草で理解したらしい彼が何とも言えない複雑な笑みで自分の唇に触れて溜め息。
「【感謝】って言う割に・・・・嫌がらせも交じってるでしょ?」
「さぁ?何のことでしょうか?」
「だって、こんな千麻ちゃんから濃密なキスしてきてくれたところでエッチまでは許してくれないつもりの癖に!!」
「・・・・しないですよ。別居中ですから」
「・・・デジャブ・・・【契約婚】って言葉がずっとチラついてる」
「ああ、懐かしくてスリルがあって嬉しいでしょう?」
「っ・・・千麻ちゃんの人でなしぃ!!」
「失礼な。過去からしてみたら随分甘く寛大になったものだと自分に呆れているというのに」
フンッと目を細めてくるりと体を廊下に向けていく。
今度は嘆いている彼をしっかり放置して、振り返る事なく今の自室である部屋に入り込んで服を纏う。
馴染みのないベッドの感触を確かめるように倒れ込むと、不規則に散らばる自分の髪の毛。
視界に捉えるほどは長いけれど記憶鮮明な長さには及ばない。
半日・・・苛立ちの元であった物。
でも・・・・。
そっと自分の髪からついさっき与えられた物を取り外し、うつぶせだった体を仰向けに直すと確認するように髪留めを自分の顔面に掲げた。
「・・・・・・・ムカつくわ・・・」
ジッと見つめ確認した後に眉根を寄せると不満を口にして、その髪留めを優しく握ると胸の上に下ろしていった。
何がムカつくかって・・・・、
指輪の時も、誕生日プレゼントも、こうして・・この髪留めも。
さらりと私好みの物を用意されるものだから、悪意見せて突っ返すような事が嘘でも出来ないのだ。