夫婦ですが何か?Ⅱ
そんな彼の頭を一撫でしながら今更な言葉を弾いてみる。
「本当に、あなたは私が大好きですね」
「大好きですよぉ・・・、今となっては何で秘書時代から手を出して無かったのか疑問なくらい」
「・・・年増のインテリ眼鏡で愛想もない女だったからでは?あの当時のあなたの【一夜限り】の恋人たちは可愛い系な女子ばかりでしたし」
「千麻ちゃん・・・年増って、あの当時は一番若くて23でしょ?・・・・ってか・・・やめようかこの話題」
「こうやって、あなたには都合のよろしくない過去の関係も見事把握している私なのですよ?足掻いて無駄に優位に立っても簡単に突き崩して見せるのでご注意を、」
さりげなく太ももに触れ始めていた彼の手を払いのけると、無駄話は終わりだと彼を振り切り立ち上がる。
本当にここ最近は遅刻させてばかりの朝。
これでは元秘書の名折れだ。
そんな日々の失態を自分の責任として刻むと、息を吐いて気持ちを切り替え妻よりも秘書寄りの意識で彼を振り返った。
「私の気持ちを繋ぎとめる為にも・・・しっかり励んで稼いできてくださいね」
ああ、これは間違い。
秘書でなく妻の言い分だ。
そうは思えど特別な訂正もせずに彼を見つめて、あくまでも金銭面匂わせる発言をした私に眉尻を下げてクスリと笑う。
「千麻ちゃんの愛情買えるなら一生分の給料でも安いもんかな」
不安の皆無。
やっと平常の姿見せる彼がゆっくり立ち上がるとその身を仕事向きに変えるべく動き出す。
欠伸をしながらのそりと歩き出し、私の横をすり抜ける一瞬に、
「ありがとう」
ぽつりと落とされた礼に彼の気配を背後に感じながら口の端を上げた。
そのまま寝室に入りこむのを音で理解し、自分もようやく本来のペースに戻れるとキッチンに入りこんで遅めの朝食を作り始めた。