夫婦ですが何か?Ⅱ
テンションをあげてさえしまえば難なくご機嫌に会社に出勤した彼。
一応まだ喧嘩の仲直りをしたつもりも、別居を取り下げたわけでもないのに呑気で変わり映えのない始まりを切ったと思う。
でも果たしてまだコレを喧嘩と言っていいのか。
悲しいかな確かに事実を知ったあの瞬間には言い様のないショックを受けたけれど、継続するほどのそれでもなく今は他の過去同様の分類になりかけている。
勿論、あの時期に他の人と関係していた事には複雑な物が疼くけれど。
私だって似たようなものだ。
結局は一線越えはなかったけれど恭司と日々キスして、挙句誘いをかけた事もあるんだから。
お互いさま。
そう結論づければ話はもう終わってしまうのだ。
いつも通りに晴天の空を確認しながら洗濯物を干して、主婦として時間を大方終わらせ息をつく。
それを見計らったようによちよちと近づいてくる翠姫を抱えあげると、私の髪に留まっている髪留めを目ざとく見つけて手を伸ばしてくる姿。
昨夜の思わぬ彼からの貢物。
貰ったからには宝物だと仕舞い込むのではなくふんだんに利用しようと身につけて、少しでもこのスタイルに馴染むように時々鏡を覗き込む。
うん、・・・・髪なんてすぐ伸びる。
今も毛先を触りながら鏡を覗き込み納得して、腕の中で鏡に反応して楽しげな翠姫に微笑みながらリビングに戻った。
そうして爆弾でも見つけたように表情が強張って不動になる。
そうだ・・・そうだった。
テーブルの上に忘れないようにと置かれた回覧板。
自分で置いたのだけども忘れていたかった気持ちもある。
むしろ消えてなくなっていてほしかったと突飛な事を考え始める私も大概だと深く溜め息をついて回覧板を持ちあげた。
まぁ・・・直接会うわけでもない。
むしろ平日のこの時間帯に家にいる筈もない。
転勤したてと言ってもさすがにもう会社勤めを始めているだろうと自分を慰め励ます様に言葉を続けて玄関を出る。
癒やしアイテムの様に翠姫を抱きしめ、私にとっては鬼門の様な相手の家の前に立つと物音を立てないようにドアノブに回覧板をかけた。
なんてヘタレな。
でも触らぬ神に・・・だし。
そうしてそそくさと踵を返して心の平穏である自宅の扉を視界に捉えたのに。
耳に入りこんだ確実なる違和感の響き。