夫婦ですが何か?Ⅱ
でも声なんかじゃなく、何か陶器が割れたり落下したり・・・・。
もっと言えば・・・・人が・・・倒れた様・・・な。
そしてそれは今ほど背中を向けた隣人の部屋の扉の向こうから鳴り響いたものらしく。
振り返ってしばらくは様子を伺うように不動になる。
あれ?在宅?
こんな時間帯に?
そしてその後の物音が一切しない事にも疑問が走る。
いや、でも、そんな薄壁の作りのぼろアパートじゃあるまいし、そうそう生活の音が漏れる筈もない。
だから疑問に思うのもどうかと思うけれど。
遭遇してしまったが為にどうもそのまま立ち去れなくなった心情で、躊躇いながらもインターフォンに手を伸ばす。
伸ばしてしまえば迷いなくその音を響かせて、中からの反応を待って扉を見つめた。
それでも人の動く気配もない中の様子。
おかしい。
もし誰もいないとしたら、勝手に物が落ちて割れたりするだろうか?
そんな疑問を頭に、今度は扉をノックして自分の存在を示していく。
「新崎さん?隣の大道寺です。回覧板をお持ちしたんですが」
理由が都合よくドアノブにあって、迷いなくその声を響かせ応答を待つ。
もしや泥棒の類ではないだろうかと半信半疑でドアに手をかけるとこのご時世に不用心にも簡単に開く扉。
ガチャリと手に軽い感触を得て、僅かに開いた扉に困惑して不動になる。
本当に・・・泥棒だった・・ら?
いや・・でも、このマンションのセキュリティーや住んでいるこの階の事を考えればその予測は立ちにくい。
だとしたら、
「・・・新崎さん?」
グイッと扉を開くと馴染みのない部屋の空気を感じながら確認の声を響かせ、直線状に捉えるリビングの入り口に向かって視線を向けた。
開いているリビングの扉。
だけども人の動く気配もなくて、最悪的な予想が徐々に脳裏に浮上し始めた瞬間。
「・・・・・・・・はい、」
小さくもリビングの向こうから聞こえた声。
この響きは浅いけれど聞き覚えがあると軽く安堵。
それでも相変わらず姿を現さない姿に方眉をあげて、再度疑問をぶつけようか迷ったタイミングに向けられた要望。
「・・っ・・・動けないんです・・・助けて・・ください」
どこか必死さ垣間見せる声音に迷うことなく靴を脱いで家に上がり込む。
同じフロアでも作りが違うものだと部屋の間取りに感想抱きながらリビングに入りこめば見慣れぬ空間に一瞬だけ呆け、でもすぐに近くで倒れている姿に意識が移った。