夫婦ですが何か?Ⅱ
それでもさすがに放っておける状況ではないと判断し、他人よりは情の薄い私でもその身を動かす。
手早く割れて散らばったカップの破片を拾い集め、掃除機の在所を確認し可動させて綺麗に片付けていく。
その間未だあまり顔色のよろしくない男が愛娘をあやしながら遠巻きに私を見つめて。
普段であるなら『見るな』と一喝していたかもしれない、なんて事を思いながらキッチンに立った。
冷蔵庫の中には確かに豊富な野菜が手つかずであって料理好きとしては心が躍るほど。
これなら充分にその腕を振るえると手早く食事を作り上げていった。
「いやぁ・・・なんかすみません」
不意に響いた声に作り上げていた物の味を確かめながら顔を上げると、翠姫を抱きながらオープンキッチンのリビング側から私を覗き込んでくる姿。
チラリと視線を走らせただけで、味見した煮物の味に意識を戻し満足すると蓋を閉じる。
「まだ味の染み込みは浅いですが支障はないかと。ご飯も取り急ぎ土鍋で炊いたのでいくらでも。あと、生野菜をサラダと浅漬けにして冷蔵庫に入れたので好きな時に・・・・・・って、何ですか?」
淡々と詳細説明をしていたのに、改めて彼の顔に視線を移せば何か含みありげに微笑んでいるから警戒心がONになる。
今度は一体何を含んでの笑みなのか。
もう嘘にも爽やかに感じられない姿に威嚇するように見上げると、彼の視線が翠姫に移り、流れるように私の手元の鍋に移って最後に私に戻った。
その意図は?
「なんか・・・・新婚さんみたいでいいですね」
「セクハラです」
何が悲しくてこの男と新婚さんごっこをしなきゃいけないのか。
そこまで頭で言葉を綴ったのに、直後に複雑だと感じた胸の内に深く息を吐いて頭を抱える。
だって・・・、まったく同じような事を過去の彼に思って過ごしていたんだ。
デジャブ・・・。
だとしたらいつかこの人にも彼のように気を許す日が来るんだろうか?
嫌だな・・・。
自分で抱いた疑問にすかさず否定的な感情で切り返せば、すべての葛藤を明確に聞き取っていたかのようにクスクスと笑いだした男に意識を戻した。
「・・・何か・・・可笑しな事を?」
「いえ、露骨に俺との関係に嫌悪を見せるなぁ。と、」
「・・・・嫌悪抱かせるような発言で追い詰めるからだと自覚はないのですか?」
「・・・・ああ、もしかして・・・まだ怒ってます?
ご主人を馬鹿にされたって?」
怒っているというより根に持っています。