夫婦ですが何か?Ⅱ
勿論翠姫を求めての仕草であったのに、私を珍しく真顔で見つめた彼が何をとち狂ったのか片手で翠姫を抱えたままもう片方の腕をこちらに伸ばしてくるから身を引いた。
そして何のつもりだと睨み上げれば返される予想外で的外れな答え。
「いえ・・・何かハグ的な物を求められていたのかと」
「・・・・すみません。私は生粋の日本人なのですが」
「ご主人も娘さんも鮮やかなグリーンアイだし」
「これは遺伝子の悪戯です。彼も英、仏、伊語と長けてはいますが海外生活をしていた記憶はなく、このグリーンアイはもうずっとずっと彼以前から続く物ですから」
言いながら今度こそ娘の奪還をするべく手を伸ばしたのに、スッと交わされ身を引く姿。
今度は何の企みだと呆れを通り越して殺意すら芽生えそうな。
なのに相変わらず楽しげに微笑み見下ろす男はそんな殺意の眼差しなんて全く気にしていないようで。
「すみません。もう不本意な慈善事業は終了いたしました。私の何よりも愛おしい愛娘を返却いただけますか?」
「確かに・・・子供だからと言う欲目や魅力的なグリーンアイを抜いても・・・この子は抜きんでて目を引く愛らしさだ」
「・・・・恐いんですけど。まさかロリコンの気があるのでは?」
「いえ、至ってノーマルに同年代程の女性が恋愛対象ですが?」
「・・・・それが今現在の何よりの朗報です」
とりあえず娘への危険はなくなったと安堵し、いい加減にしろと更に手を伸ばし翠姫の体に指先が触れたのに。
それより明確に私の手首に絡んだ指先の感触。
それに驚くより早く引き寄せられた体が望まぬ接触である衝撃を得て、見開いた双眸には反対側に抱かれた愛娘を映しこむ。
つまり・・・現状・・・いけ好かない男の腕に捕まりまさかの抱擁をさせられているんだ。
愛娘も同様に。
「同年代の・・・・女性ですよね?あなたも・・・」
「っ・・・本当に悪ふざけも大概にしないと訴えますよ?」
「そんな、純粋なる告白と提案じゃないですか。こんな夫婦像も・・・ありかなって・・・」
さすがの私も一瞬では頭が回らない。
とにかく一番に脳裏によぎっているのは慣れないぬくもりが不快だという事。
その意識のままに両手で彼の胸を押し返すと案外楽にその距離は離すことが出来た。