夫婦ですが何か?Ⅱ
遅れてすぐ傍にしゃがんだ気配も勿論気がついていて、『本当にいいですよ』と軽く笑いながら言われているのも気がついている。
いや、私が全然よろしくないんです。
散々失礼な言葉を繰り返し、更に形的には彼を多分振った直後の娘の乱行。
そうですか?とか言って帰れるほど無神経じゃないですから。
腕の中で何やら遊ばれていると勘違いして楽しげな翠姫を抑え込みながらも自分の周りの書類を拾い上げ、あと数枚という時に紛れ込んで落ちている他の紙よりサイズの小さな物に目が留まる。
サイズ的にも光沢感からも何かの写真の裏面だと理解して、仕事関連のそれだと何の意識もなく手を伸ばし指先で触れた瞬間。
「気をつけてください・・・」
耳に近い位置から入りこんだ声音と伸ばした手首に絡んだ熱。
それが触れた物から離れろと言うように感じて咄嗟に指先を離すと小さく笑ったような息遣いを感じる。
何だろう。
さっきとは全く違う緊張感に満ちて感じる空気。
それを確認するように振り返って捉えた姿はいつもの如く柔らかく微笑んでいる。
微笑んではいる・・・・でも、目が・・・笑って無い。
「・・・・写真とは・・・その人のプライバシーを覗くような物。・・・・悪戯に、不用意にその詳細を覗き見ると思わぬ火傷を負う事になりかねないかも・・・」
「・・・・・全くの・・・同感です」
写真にまつわる火傷ならとっくに火傷済みだと身に染みて理解している。
その火傷の痛みが鮮明だからこそ余計な危惧や懸念が浮上してこの男を見つめてしまう。
決して悪戯でもなく、不用意でもなく・・・・この写真の詳細が気になったと言ったら・・・確認してもいいのだろうか?
でも、さすがに考えすぎよ千麻。
でも・・・・本当に?
少しずつ上がる心音が自分が焦っているのだと伝えてきて、目の前の微笑みが鋭利な何かに感じて心が畏怖する。
触れられて彼の力を感じる手首に意識が走って、今更強く理解する事。
男の人だ。
決して力では敵わない人。
「・・・・・っ・・・あの、そろそろ・・・私も家の用事が、」
「ああ、そうですね。お引止めしてすみません」
もっともらしい主婦の言い訳を口にすればあっさり外された手に心底安堵し心音が異様に早くなって苦しくなる。
別にこの人がそうだと決まったわけでないのに余計な警戒心働かせ動揺しているのは滑稽だと分かっているのに。