夫婦ですが何か?Ⅱ
ヘタレだと思われてもいい。
でもとにかく・・・、
今は何よりも・・・・、
この笑顔が怖い!!
もう限界だと、微笑む彼に適当に会釈して玄関を後にすると、今度は引き止めるような言葉もなく外気に触れた体。
すぐに背後で閉まった扉の音にその場に倒れ込んでしまいそうなくらい脱力して冷汗が噴き出してくる。
心臓が・・・壊れそう。
苦しいくらいに速い鼓動に目を閉じて、胸に抱く癒しの存在をしっかり抱きしめ安堵する。
でもやんちゃが過ぎる我が娘。
力任せに髪の毛を引っ張って遊ぶ行動にさすがに耐え切れなくなって目蓋を開けると、絡んだグリーンアイに心底脱力。
「・・・・・・パパに・・そっくりね」
私をいとも簡単に安定させる緑。
私の生活の精神安定剤。
緑・・・ね。
「・・・・・お散歩でも行こうか・・・翠姫・・・」
今は不安と隣り合わせの部屋にいるより緑溢れる公園に身を置く方が心が休まる。
そう判断すると自室に戻り靴に履き替え再び外に出る。
一瞬隣の扉に警戒をおいて、その後は足早にエレベーターホールに向かって。
情けない。
らしくない。
でも疑いを除いてもどうしても最初からあの男は苦手の範疇の存在なのだ。
それに拍車をかけた疑いの上乗せ。
これはもう私だってこんな風に情けなくも逃げ腰になる。
絶対に榊よりも警戒置くべき存在たと思う。
ドキドキと背後を気にしながらエレベーターを待ち、開くや否や飛び乗って閉ボタンを連打する。
そんな事をしたところで扉が俊敏に動くでもないのに。
早さは変わらずとも静かにその空間を閉ざした扉に、安堵し息を吐くと壁に寄りかかって翠姫の頭を一撫でする。
こんな生活は疲れる。
本当に大道寺の力で何とかならないものかと真剣に頭を抱えた自分に呆れもするのに完全には掻き消せない思考。
結局は被害も特別なく、もっと言えば私が疑っているだけという現実。
そんな事で大道寺の力発揮してどうする?
相当・・・精神的にきてるな私。
完全に余裕が薄れている自分を自覚して深く息を吐いたタイミングに浮遊感が消え、固く閉ざされていた扉が外気を取り入れながらゆっくりと開く。
ふわりと風が髪を揺らして、息苦しかった心も体もやんわりとその緊張を解いていく。
これは日中の散歩が日課になりそうだと苦笑いでエントランスを歩きぬけて、この時間帯に郵便もないだろうと郵便受けの場所もチラリと横目に歩きぬけた。