夫婦ですが何か?Ⅱ




だけども捉えた姿に足を止め、くるりと向きを変えると躊躇わずに声をかける。



「あの、」


「っ・・・」



振り返った姿はそこまで馴染みは深くなくとも顔は見知ったこのマンションの住人。


つい最近私の前方不注意で接触したのに、なぜか問題の隣人に威嚇された不憫な人。


だからこそこれがいい機会だと声をかけ今度こそ謝罪を口にしようとその身を戻したのだ。


仕事の最中であったのかそれとも遅めの出勤か。


スーツ姿で郵便物を手にこちらを見つめている姿が何事だとこちらを伺って。


確かに普段接触もない私が声をかけたのだから驚かれても不思議はない。



「突然すみません。あの・・・先日はこちらの前方不注意でぶつかってしまい、それなのにあの時はまともに謝罪も出来ずに失礼いたしました」


「・・・ああ、・・・いいんですよ」



私の言葉にその記憶を回想するように視線泳がせたその人が思い当ったそれに力なく笑って軽く手を振った。


気にするな。


そんな感じに私に返したその人がゆっくりその身を動かすと私のすぐ近くまで来てからクスリと笑う。



「何か月ですか?」


「ああ・・・1歳です」


「可愛い盛りですね。ウチの娘はもう口も達者で」


困ってるんです。


と言いたげに苦笑いを浮かべ、翠姫の頭を軽く一撫ですると確認するように目を覗き込む。



「綺麗なグリーンアイですね。あはは、お人形みたいだ」


「主人の・・・遺伝です」


「ああ、ご主人も俳優顔負けで昔からマンション内でも有名でしたからね妻の話題にもしばしば」



口元に手を持っていきよく話すと示すように指先を開いて閉じてする仕草に軽く笑って口元を抑えた。


笑ったことに特に気を悪くするでもない相手が腕時計を確認すると私に会釈して立ち去ろうとする。


手に持っていた郵便物を鞄にしまいながら歩きだした姿を見送って、我が家の郵便も確認しようか意識を郵便受けに移したタイミングに。



「ああ、」



思い出したかのように響いた声に今程見送った姿に視線を戻して見つめれば、ちょうどその人も振り返る瞬間で対峙した表情は少し真面目な物である。


何事かと。今度は私が疑問を浮かべる番で、疑問のままに方眉上げるとすぐに返されるその答え。



「この前の・・・隣人さんですが、」



この前と言えば、【この前】なのだ。


さっきも話題に上がったその時の事であろう。






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