夫婦ですが何か?Ⅱ
だからこそ話題に上がった人物の存在に薄れてきていた警戒心が浮上して、馬鹿みたいに心音が速まりだす。
「・・・はい、彼が・・・何か?」
「いえ、【何か】という事は特別ないんですが・・・、偶然かもしれないんですが・・・」
「・・・・はい、」
「昨日・・・お出かけなさってませんでしたか?」
そう問われて回想するまでもなく、確かに食材の買い出しなんかで外出したと記憶がある。
だからこそすぐに頷いて肯定すれば、どこか困ったように表情を歪めたその人に変な緊張が走ってしまう。
「あの・・何か?」
「多分・・・偶然なのかもしれませんが・・・あなたがマンションを出ていったすぐ後に彼を見かけて・・・その・・・なんかつけて言っている様にも感じた物ですから」
「・・・・・」
「あっ、でも・・・気のせいかもしれないです。すみません、おかしな事を言ってしまって・・・」
「いえ・・・ご忠告ありがとうございます」
申し訳なさそうに頭を下げて今度こそ立ち去る姿に口元だけは弧を描く。
心中は酷く大荒れだというのに。
これは本当に私の推測だけの問題だろうか?
次から次へと浮上する隣人への懸念事項。
ああ・・・なんか激しく・・・。
「目が回る・・・・」
謎だらけの近所関係。
榊の恨み、新崎の含み、彼と関係した彼女・・・。
そして・・・私にちらつくストーカーの影。
日々順番に巡って、一周するたびに問題が大きくなっていっているような。
手に負える、誤魔化せるほどであった物が徐々に大きくなって手一杯で。
得ていた平和も危ぶまれる。
何で?
契約婚の時はこんな近所トラブルはなかったのに。
どうして今になって一気に、ほぼ同時に降りかかって迷走させるんだろう。
「・・・・っ・・・気持ち悪い・・・・」
平和ボケしていた体に一気に降り注ぎ足元を固める鉛の様な問題。
早くしなければ身動きが取れなくなりそうで、なのにもがけばもがくほど足を取られて沈んでいくような。
「やっぱり・・・・不向き・・・」
私には・・・向いていないって事なのかしらね?
ダーリン・・・。
望むのは・・・平凡な夫婦生活だというのに。