夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・引っ越しませんか?」
「・・・・うん、いや、ごめんちょっと突っ込んでいい?何で帰宅早々扉くぐっての第一声が『引っ越し』?」
彼が言った通りにまさに玄関先。
腕を組んで彼を出迎えた私は『おかえり』もなしにその言葉を発したのだから彼が苦笑いで困惑するのは当然だと思われる。
それでも、私もそれだけ切羽詰まっているのですよ・・・・。
「一軒家がいいです。子供が2人にもなったらマンションは手狭でしょうから」
「えっ!?千麻ちゃん妊娠したの!?」
「してません」
「何なんだよ!?めっちゃ驚いたじゃん!!」
「2人目が理由で叶う要望ならサクッと繁殖してもいいのですが、」
言いながら自分の服に手をかければさすがに理性的に待ったをかけて私の手を抑え込んでくる彼。
そして自分でも感情的にならないようになのか、深く息を吐くと困ったように私を覗き込んでその疑問をぶつけてくる。
「えっと・・・とにかく・・千麻ちゃんの滅多にない強い要望だって事はよく伝わった」
「なら、部屋に入ってまずはネットで物件を・・・」
「ちょ、ちょっと、落ち着こう。ね?なんか【別居】云々の問題すらどっかいってるけどーー」
「あんな微々たる嫌がらせはどうでもいいんです」
「【微々たる】なんだ!?そしてやっぱり【嫌がらせ】だったかこの野郎・・・・んっ・・・」
「・・・っはぁ、これで許してねダーリン」
「・・・・許しちゃうかも・・・」
相変わらずアホな流れだと思ってしまう。
嫌がらせの別居に見事反応示した彼に面倒だと濃密なキスをかまして黙らせれば。
見事飲まれて流してくれた姿に単純だと呆れつつも愛らしいとも感じてしまう。
ああ、世の中みんな彼のように単純であってくれたら。
そんな彼にはかなり失礼な事を切実に思いながら彼の頭をワシャワシャと撫でてみれば。
もう抵抗しないと諦めたように受け入れる彼が私を抱きしめ背中を軽く数回叩いた。
「どうしたの?またまた主婦業務に不安感じた?」
「絶対に向いてません。もう胃に不快感感じるほど迷走しそうです」
「それで?らしくなく問題から逃亡したいと」
「・・・・・少なくとも、あなたも問題の一部であると理解してから意見していただけますか?」
「すみません。本当に心底反省しております」
決して全てをうやむやにしたわけではないと釘を刺せば一気に立場逆転のように怯んだ声を響かせる彼。
まだ当分はこのネタで優位に立てそうだと口の端が上がりかけた程。