夫婦ですが何か?Ⅱ


夜分と言えるような時刻にフロアに・・むしろ各部屋にまで響くような争いを迷惑にもエレベーターで繰り広げる2人。


彼が痛がろうがお構いなしに感情のままに押したり引っ掻いたり蹴ったり。


本当に子供じみた行動で拒絶を示したと思う。


それでも絶対に食い下がらず必死に手を伸ばして私の腕を掴んだ彼。


その瞬間に目から今まで自分の内に溜めこんだ感情が流れ出るように涙が溢れ、彼には見られまいと顔を背けた。


今更なのだけども。


もうとっくに流れていた涙。


そして分かってる。


財布も持たず手ぶらで駆け出してどこにいけるのか。


彼の言わんとしていた事だって重々承知だ。


でも・・・・、


いつ間にか抵抗はやめていて、彼に腕を掴まれたまま顔を背けて口元を覆う。


彼も何を切りだすか迷っているのか無言の間に乱れた呼吸だけが静かに響いて。


ダメだ・・・・。


堪え切れない。と、エレベーターの入り口を塞いでいた彼を押し退けて、すぐに追ってくる呼びかけを無視して自宅に戻る。


さすがに玄関に鍵をかけるなんて事はしない。


それでも駆け込んだ翠姫の眠る薄暗い寝室。


寝室のカギをかけるのと玄関の扉が閉まって彼が帰宅したのがほぼ同時。


すぐに部屋のドアを叩く音に聞こえているのに無視して翠姫の寝顔を見つめる。



「千麻ちゃん・・・」


「・・・・」


「ねぇ、・・・開けて、確かに言い方が悪かった。自分の非をそっちのけでキツク当たって悪かったけどーー」


「・・・・・『けど』・・・が、つく後の言葉なんて・・・・・聞きたくないです」


「っ・・・聞いて・・・」


「・・っ・・聞きたくないって・・・言ってるじゃないですか!!」



感情的な声が響いて消える。


かわりに響き始めた翠姫の泣き声につられて涙が零れて。


ダメ・・・・、ダメなんです。


今は・・・冷静な判断を頭に浮かべようと、感情的な自分の方が前に出てしまっていて正しい言葉に素直に頷けない。


あなたの言わんとしている事が正論だと分かっていても、今は・・・・反抗してしまう。



「・・・・っ・・・今は・・・放っておいてください」


「千麻ちゃーー」


「また・・・『大っ嫌い』とか・・・言いたくないんです・・・」


「っ・・・」



お互いに痛みを伴う言葉を・・・感情的に言いたくない。

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