夫婦ですが何か?Ⅱ
本気の言葉でないのに、いや、本気でないからこそ言った直後から後悔して。
なのに収まらない感情のカオスでいとも簡単に口から零れそうになる。
そしてふざけた場面でなく、本気で感情ぶつける言い合いの場でそれを言ってはいけないと強く分かっているから今は一人でいたいのだ。
泣いている翠姫を抱きしめ揺らして宥めていく。
自分の感情を宥めるように。
扉の向こうで同じように感情のカオスに苛まれているであろう彼が多分、発したい言葉を全て飲み込んでその足をリビングに向けたのを気配で感じる。
そしてかすかに聞こえるカチャカチャと陶器のぶつかる音。
ああ、そうだ・・・。
私が感情的に廃棄した食事。
お互いに一口も食べず、きっと・・・お腹もすいていましたよね?
疲れて帰ってきたあなたに愚痴ってキレて暴行を加えて・・・。
ダメな・・・・妻ですね。
深く自己嫌悪の波に沈められて、それでも宥め泣き止んでいく翠姫と同じようにその場だけは感情を沈めていった。
押しこめて押し込めて雑に釘を打っただけだけども。
そうして感情を押しこめて自己を確立した寂しい感情で思うのは・・・・寂しいという事なんだ。
騒いで拒絶して、2時間くらいは経っただろうか?
暗い部屋で何をするでもなくぼんやりとしてようやく時計を見た現在は22時半すぎを示していて。
静かだ・・・。
この部屋もだけれど、他の場所からも音がしない。
TVの音も、人の動く気配も。
それでも出て行ったような物音もしていないから家の中にいるのは分かる。
同じ家の中にいるのに・・・・お互いを感じない時間。
そんな事をフッと思った瞬間によぎった記憶に突き動かされ、座っていたベッドから立ち上がると寝室の扉に近づき鍵を開けた。
静かな空間では微々たる開錠音すら大きく響いて。
一瞬ドキリと緊張したけれどゆっくり扉を開いてその身を出す。
確認できるガラス張りの扉の向こうのリビングは完璧な闇でないにしろ間接照明のみで薄暗い。
眠っているのだろうか?
そんな疑問を抱きながら足音を消しながら扉に近づいて、ゆっくり開いて中に入ると自分が惨状にした形跡皆無の床に目が留まる。
一人で片付けてくれた。
どんな気持ちで・・・拾い上げていたのか。