夫婦ですが何か?Ⅱ




予想もしなかった母からの電話に露骨に溜め息交じりで応じてしまえば、見事反応した母の不満げな口調。



『あんたはまたそんな声だしてぇ。何?お母さんが嫌いなわけ?』


「嫌いじゃない。時々顔見たくなるしね」


『あら、あらあらあら・・・フフッ、いいわ。その時々甘い事言う感じお父さんそっくりでいいわね千麻』


「・・・・知らないし、」



何故だか母親のツボに入ってしまったらしい自分の言動。


それに多分ニヤニヤしながら電話の先にいるであろう母。


ますます悩ましいと今度は眉尻を下げてみたのに、追い打ちをかけるは更なる問題。



「で?何よ?この前のルームウェアなら喜んで楽しんで着させてもらったから安心して」


『ああ、違うのよ。ただ、ちょっとね、』


「何?」


『お母さん達も顔見たくてこっちに出てきちゃったのよぉ』


「・・・・・・・」



ああ、凄い。


私を一瞬にして放心状態に変えるこのお人。


本当に一瞬言っている事を受付拒否した頭が誤作動でフリーズした。


でも徐々に・・・渋々受け入れ始めたそれに変な汗がこみ上げる。


こっちに・・・出てきた?



「ちょっと・・・待って・・・、こっちに向かってるの?」


『ううん、もう数時間前についてるのよ。お父さんも一緒よ』


「はぁっ!?何で連絡の一本もよこさず・・・」


『したけど・・・充電切れてたんでしょ?』



ああ、クソッ・・・反論できない。


母からすればきちんと前もって連絡は入れている。


それに出れなかったのは私の不備だ。


でも、せめて前日に連絡してくれたっていいじゃないだろうか?



「な、何で昨日の内に・・・」


『だってお父さんがいきなり『・・・なんか、翠姫の顔見たくなった』って、ぽつりと言うんだもん』


「そんな一言でいきなり来ないでよ!?」


『あら、だって滅多に自分の欲求口にしないあの人の願望よ?来るでしょう』


「私達の予定は?!」


『あら、何かあった?』


「ないけど・・・・」


『まぁ、良かった。今ね【大道寺さん】の車でそっちに向かってるところなのよ』



ああ、お願い・・・聞き間違いだと言って・・・。


さらりと母の口から出た【大道寺さん】。


勿論私も現在【大道寺さん】。


彼も【大道寺さん】であるけれどこの場合は全く別のその人が予想される。


泣きたい・・・。



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