夫婦ですが何か?Ⅱ
ああ、どうしたら娘がこれだけ追い詰められて項垂れている事が電話先で浮れているこの母に伝わるのか。
あまりの衝撃に壁にその身を支えてもらいながら立て直し、間違いであってほしかった内容の詳細を確認していく。
「だ、大道寺さん・・って?」
『いやねぇ、茜君のお父さんに決まってるでしょ』
「・・っ・・・何で、・・何で娘より先に夫の実家に行っちゃうわけ!?」
『だって、あんた連絡つかないから・・・、『仕方ないわね』ってお父さんと先にそっちお邪魔したのよ』
また・・・返す言葉がありません。
教訓・・・・絶対に携帯の充電は怠るべからず。
常に手元に常備しろ・・・だ。
自分の頭に教訓としてその言葉を刻み込んでいると、何やら雑音交じりになった耳元に意識を戻す。
そうしてクスクスと入り込んできた笑い声は久しぶりとも言えそうな。
『フフッ、やぁ、千麻ちゃん。茜とは仲良くやってるかな?』
「・・・・社長・・・」
『別に今は社員じゃないし俺も社長じゃないけどね』
「ああ・・はい・・はい・・・・・・・・なんか・・・すみません・・・」
『はははっ、千麻ちゃんが嫌味も言えないくらいに弱ってる』
はい、弱っております。
まさかの両親の突如の来訪に。
急に切り替わった相手は同じように突如の来訪を受けたであろう彼の父で、身内の奇行に申し訳なさが募って嫌味すら飛ばせない。
だからこうして笑われても私は笑う事なんか出来ずに、ただただ消沈していれば相反して楽しげな声音が耳に入りこむ。
『急に悪いね。今そっち向かっててもう少しで着くところ』
「・・・いえ、むしろ両親の来訪に申し訳ないです。ってか、電話しながら運転してますか?」
『大丈夫、スピーカー』
「ああ、良かったです。交通ルールは守ってくださってて・・・」
『でさ、茜ってそこにいる?』
「いえ・・・、朝から会社に顔出しに行ったっきりですが?」
『ふぅん、なんか何回かけても繋がらなかったからさ』
はて、珍しい。
やはり繋がらないのかと時計を見つめてさっきの記憶を回想する。
そしてメモに視線を落とせば【電話してもいいよ】のウザい文字。
しても繋がらないじゃないか。と、眉根を寄せて、軽く息を吐くと通話に意識を戻していった。
「昼には戻ると言っていたので、メールしてみます」
『うん、そうしてもらえる?俺たちもあと数分で着くと思うし』
「了解です」
そう返事を告げとりあえず電話での会話を終了させると、フゥッと一息ついて気持ちを切り替える。
来てしまった物は仕方がないと。