夫婦ですが何か?Ⅱ
そして今程通話を終えたばかりの携帯で再度彼の番号を呼び出すと耳に当てながらキッチンに向かった。
コール音を聞きながらコーヒーを準備しお茶菓子を探す。
ああ、前もって言ってくれていたら何か用意していた物を。
そんな焦りも感じながら、まったく出る気配のないコール音に区切りをつけて。
手早くメール画面を開くと言葉短く内容を打ち込んだ。
【緊急!!両親来訪。プラス義父。すぐ戻れ!】
これでいいだろうと送信ボタンを押すと雑にカウンターに投げ捨てた。
たいして散らかってはいないけれど今までより更に部屋を片付けて、客用のスリッパを並べて玄関を整える。
事情も分からない翠姫が私の後を追って行ったり来たりしているのをチラチラと確認して。
部屋に響いたインターフォンで、嵐の襲来だと溜め息が漏れる。
そうして下の入り口を開錠すると翠姫を抱え上げて玄関に向かった。
せめてエレベーター前で待っていようと。
携帯を手にして画面を確認し、相変わらず音沙汰ない彼に落胆しつつ靴を履いて。
翠姫が顔を触った瞬間にコンタクトするのを忘れていたと軽く溜め息。
しかしもう来てしまうから諦めようとエレベーターの前に立てば上昇してくる数字を捉える。
止まる事なく上がり続けるそれは確実に乗車している人間を教えてきて、予想通りの階数で点灯したライトと固く閉ざされていた扉の開放。
ふわりと風を巻き起こし開いた扉から軽く久しぶりな顔と酷く久しぶりな顔が並んで私を見つめた。
「・・・・いらっしゃいませ、」
「やぁ、千麻ちゃん。数分ぶり」
そう言って爽やかに微笑んだのは彼によく似た雰囲気の義父。
そしてその背後から満面の笑みで飛び出してきたのが・・・我が母上様。
「やだ、翠姫~、大きくなってぇ」
と、娘には目もくれずに私の腕から翠姫をひったくったこの母。
軽く呆れの眼差しで非難するように見つめても一切伝わったりはしないのだ。
むしろいち早く反応し気がつくのは。
ポンッと肩に置かれた手。
それに意識し振り返れば相変わらず無表情な父が私の横に立ち、母を見つめてから私を見下ろした。
「千麻・・・無駄だからやめておけ」
「・・・・知ってる」
淡々と無表情で妻を、母を諦める父と私。
それを苦笑いで見つめる義父とお気楽に孫との抱擁を楽しんでいる母。