夫婦ですが何か?Ⅱ
でも現状、もうどうやったって変わる事のない父の人間性に嘆くより、今自分が置かれている窮地の方がそれを上回る。
どうしたら弁解出来るのか。
聞き入れる場を、余裕を持ってもらえるのか。
だけど・・・
「どこまで・・・、」
「んっ?」
「・・・相手を守りたいって秘密は・・・、どこまでが許される物なのかな?」
心で抱く疑問が零れる。
自分の望む意図に反して・・・、自分が危惧したものではない事で結果彼女を傷つけているような気がする。
気がするじゃない・・・、
怒らせて傷つけているんだ。
乾いた言葉にならない声を発して、両手で顔を覆うと自分の不甲斐ない現状に落胆し沈む。
指の間から捉えられるは住み馴染んだ部屋の扉の前の床。
ああ、こんな柄をしていたのかと今更思ってしまうくらい見つめ降し、ゆっくり息を吐いた瞬間に耳に入りこんだ声。
「それが、純粋に相手だけの為なら・・・。
己の保身が入り込まない物なら・・・・」
耳の奥に突き刺さるように言われた言葉に顔を上げて、軽く振り返ってその目に映すのは珍しく嫌味な笑みなく壁に寄りかかって腕を組んでいる扉の隙間越しの父。
フッと答えを呟いて、静かにその視線が向けられ絡むとようやく柔らかく口の端を上げた。
「・・・・感情面という意味だろうが、その身自体だろうが、本気で秘密裏に守りたいならスマートに顔にも態度にも出さずにやるのが鉄則だ」
「・・・・うん、」
「でも・・・その秘密に小さくも相手だけじゃなく、自分の保身でもある物を混ぜたら・・・簡単に崩れるぞ。
それは・・・自分の後ろめたさだから。
後ろめたさは必ず相手に平常でない自分を見せて疑惑を映す。
疑惑は必ず悪印象から始まる物だ。
例えそれが始まりは大した秘密ではなかった物も大きな問題に膨張させるくらいに、」
淡々と続く父の真面目な返答に逆らう事なく耳を傾ける。
否定を返す場もない程的確で納得する言葉。
自分の身に沁み込んで、ひっかき傷だらけのその身にジワリと痛みを残していくような。
消毒液の様だ。
転んで出来た傷に、怪我をしたらこうなるのだと、転ばないように教訓を与えられているような。
傷を治す痛みと一緒に。
「千麻ちゃんがお前本来を見落とす馬鹿な女の子だと思うか?」
「・・・」
「もし・・・本当のお前を的確に捉えられない彼女なら・・・・、俺やお前が好んで欲したりするものなのかな?」
欲しがらない・・・。
そんな・・・的外れで上辺だけしか見ないような女であったなら。
まず・・・仕事の上でも欲したりしなかっただろうね。