夫婦ですが何か?Ⅱ
と、言ってもこの父が浮れた様も見た事はないけれど。
むしろあんな場面に出くわして尚感情を見せない姿は尊敬にも値する。
一体今は何を思って同じ景色を見ているのかとチラリ横顔を確認すれば。
「茜君のお父さんとは何を話してた?」
「ああ・・・まぁ、彼が誤解訴えて必死だとか、」
「あの人も立場的に居心地悪いだろうに平然とこの空間にいるな」
「まぁ、肝は座ってるわよね。そこは大企業の社長様だから」
「凄いな、」
「いや、そうやって冷静に語ってるお父さんも充分な感じだから、」
淡々と無感情で語る父に突っ込みどころ満載だと淡々と切り返す。
私と父はいつだって似た者同士でこんな調子だ。
だからこそ、私が契約婚なんて物に乗った時も普通の親なら怒り心頭であろう事態も案外あっさり飲み込んだのだろう。
今も思い出す。
一応結婚は結婚だと顔を見て話す為に実家に戻った時の記憶。
『会社の上司と結婚します。でも一年後には離婚する契約付で』
言い訳なく結論を告げた私に母は持っていたお茶菓子を畳に食させ、次の瞬間には小型犬並にきゃんきゃんと私の周りで吠えてみせた。
それは予想内であったから黙って聞き流していたけれど、追って弾かれた父の言葉。
『・・・・お前が、後悔しない道だと自信もっての選択なら反対はしない』
そうあっさりと一言で締められたその場。
直後母の吠えは父に向いたけれど父はそれ以上は私に意見せず。
さすがに多少の反対はあるかと思っていたから拍子抜けしたのも本当。
今でも謎だ。
あの時・・・本当に娘の選択に納得しての一言だったのか。
「お父さんは・・・・・」
「ん?」
「・・・・・夫婦ってなんだと思う?」
聞かないつもりだった内容を、聞きたかった内容と差し替えて響かせる。
今さっき別の人からも模範解答を得た内容。
それを父はどう答えるのか。
親子としての会話としてはどこか気恥ずかしいものだと感じたのに、問われた父は表情を崩すでもなくひたすら眺めのいい景色を見つめて。
でもか細く息を吐くと考え込むように下を向きポツリポツリと声を響かせ始めた。
「気の合った他人の・・・折り合いの繰り返し」
「えっ?」
「元々、価値観も生き方も違った2人が最初から最後まで分かりあう事はないんだよ千麻」
「そ、それはそうだけど・・・・なんか衝撃の返答だった」
「なら・・・俺がどこかで折り合いつけてなきゃ・・・母さんと今も一緒にいると思うか?」
「ごめん・・・その事に関してはいつも疑問だったわ。何でお母さんと夫婦なんだろうって」
「・・・・成り行きだな。気がつけばなんか俺の周りウロウロしてて、特別感情込めた反応したわけじゃないのにいちいち喜んでニコニコしてて・・・・・・飽きないなぁ。と思ったらなんか夫婦になってたような・・・」
「そんな曖昧な感じで私は生まれたのですね・・・」
いや、父の事だからそんな事だろうとは思ってたけど。