夫婦ですが何か?Ⅱ



よろりとした体を何とか保ち、それでも眩暈がすると言いたいのか片手で顔を覆う姿を腕組みしながら冷静に見つめる。


そしてそれを傍観する義父の楽し気な事この上ない。


それでも、いつまでもこうしているわけにもいかず、動きを見せたのは傍観者であった義父様だ。



「ほら、人間諦めも肝心だぞ茜」


「諦めて最悪な事態になったら父さんのせいだ」


「何を言っているんですか?最悪な事態になったとしたらそれはあなた自身の素行の悪さのせいでしょう?何、実の父に責任転嫁して被害妄想口にしているんですか情けない」


「おお、千麻ちゃん。いいねぇ、息子嫁が俺の味方についてくれた」


「私は常識を常に語るだけで誰の味方もしておりません」


「・・・なんか・・・もういいです・・・・」



淡々と言葉を返せば嬉々とした義父と対照的に意気消沈した夫の鬱陶しい姿×2。


ああ、結局職場だろうが家庭だろうが私はこの2人にいつだって困らされるのが常なのだと溜め息をつくと、彼を引きずるように連行する義父をエレベーター前までは見送るべく歩きだす。


彼もすでに無駄な抵抗はやめていて、渋々自分の重い足取りでも歩きエレベーターの前に立って深く息を吐いた。


その溜め息の重い事・・・。


まるで死刑宣告され、今まさに処刑台に向かう囚人の様な。


ああ、まったく・・・情けないったらないわよダーリン。



「ああ・・・忘れてました・・・」



あまりの姿に呆れ果て、ぽつりと言葉を弾くと見事振り返った姿が2人。


でも自分の集中や言葉の対象は勿論彼一人に対してである。


そして振り返り視線が絡んだ瞬間に即行動。


見事空気に乾いた音が大きく響き、自分の掌がひりひりと痛みを残す。


その類似する痛みを頬に負った彼がよろめき壁に背中を寄せると、驚愕の表情で私を見つめて呆然とする。


もう一人、さすがに呆然としておられる方が一人いるけれど。


だけどもそんな二人を無視して壁に寄りかかった彼の胸座を両手で掴んで顔をズイッと近づける。



「・・・・殴られただけで良かったと思ってくださいね。あの瞬間・・・どうやったら殺人が肯定できるか真剣に考えていた私なのですから」


「わ、わぁ・・・痛いって事は生きてるね・・・俺、」


「っとに・・・・何が『大好き』よ・・・」


「・・っ・・・」


「本当、あんな熱に浮かされた時間の『好き』ほど世迷言なのだとしっかり学んでいた筈なのに・・・」


「よ、世迷言なんかじゃなく・・・愛してるよ、・・千麻?」


「愛してる妻をソファーに残し、他所の女の前で裸晒すのがあなたの愛情表現だとでも?」


「っ・・だから、ごかーー」


「黙れーー」



彼の言葉を切って、言葉の実行とばかりに唇を重ねてその声を封じていく。


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