夫婦ですが何か?Ⅱ



予想外の口づけに見事放心し受け身一色の彼。


そして多分それを傍観していた義父は嫌味な笑みで楽しんでいるのだろう。


それを全て把握してゆっくり重なりを解いていけばエレベーターの到着音が耳に響いて分厚い扉がゆっくり開いた。


それをチラリと横目で確認し、すぐに驚愕で見開かれたままのグリーンアイに戻していく。



「・・・・・あんまり・・・出すぎないでダーリン」


「・・・はっ?」


「叩いて戻せる位置にいて・・・・、」


「千麻ちゃん?」


「・・・・・・・折り合いつけて・・・お酒飲む老夫婦目指す気満々なんですから・・・・、

【出直し】て、格好良く一言で私の機嫌直せる文句携えてきなさいよ!」



言いながら半ば強引に隣で口を開いていたエレベーターにその身を突き放すと、静かに先にそれに乗り込んでいた義父が微笑みながらボタンを押した。


閉まる直前にようやく正気戻ったらしい彼が態勢直してこちらに動き出したのを捉えたけれど、見事遮り閉まった扉。


今頃エレベーターの中で言い様のない葛藤にもがいている頃だろうと想像してクスリと笑うとその身を返して。


明日にはどんな反応で帰宅するのかと想像しながら自宅への角を曲がれば。



「・・っ・・・・」


「・・・・こんにちは、」


「・・・・こんにちは、」




曲がった瞬間に壁に寄りかかって腕を組んでいた姿と対面。


明らかに意図的にそこにいた事を感じさせる姿に形ばかりは挨拶を返すと、無表情だった口元にスッと弧を描いてふらりと身を起こす。


そしてまっすぐに私と対面し見下ろすのは隣人・・・・榊だ。


その視線がチラリとエレベーターがある方に視線を走らせてからすぐにまた私に戻る。


それを無視して横をすり抜け自室に向かおうとしたのに、すぐに阻むように私の前に移動する男。


あからさまな嫌がらせに挑むように見上げれば、クスリと笑って覗き込むように身をかがめてくる。



「・・・昨夜は・・・なかなかな公開夫婦喧嘩をごちそうさまでした」


「公共の場で喚いた事は大変失礼いたしました」


「いや、・・・・物凄く楽しませてもらったし・・・、いい気味、」



多分、【いい気味】というセリフは彼に対して向けられた言葉なのだと思う。


フフンッと鼻で笑って方眉上げての皮肉な笑みは、やはり彼に恨みを抱いているのだと証明してくる。


でもその恨みを私に向けたり巻き込んでくるのはお門違いだと、再度逆側から抜けて行こうとしたのにもれなく失敗。


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