夫婦ですが何か?Ⅱ
「大丈夫ですか?何が・・・」
「っ・・・あな・・あなたが・・・・ですか?」
「落ち着いてください。ゆっくり息をして・・・」
言いながら宥めようと手を伸ばしてきた彼にビクリッとして身を引けば、今の私の心中察したように手を引き戻し触れることを諦めた彼。
そして敵意はないとある程度の距離を保って私の顔を覗き込んで神妙な表情を向ける。
それでもさすがにあんな事態の後だ、更に言えば積み重なった疑惑で簡単に目の前の彼を信用しきれず威嚇するように見つめ上げてしまった。
体が震える。
足ももう力が入らない。
ああ、そうだ・・・・恐かった。
恐くて恐くて・・・・今も恐くて。
目の前のこの人でさえ信用しきれなくて恐い。
「落ち着いてください。・・・もう大丈夫ですから、」
再び告げられた言葉にすぐに首を横に振って否定を示す。
間抜けにもすぐに返せる返事がそんな体で示す方法しかなくて、それでも何とか追って声を響かせようとすると驚くほど音がままならない言葉。
「・・っ・・・あ・・・・・あな・・が・・、
あな・・たが・・・・わ・・たし・を・・」
私を襲ったのか?
そう言いたかった言葉を上手く繋いで理解してくれたらしい彼が首を横に振ると否定を響かせる。
「違います。あなたは今何かトラブルに巻き込まれたんでしょう?その時無我夢中で抵抗して気がつかないうちに叫んでませんでしたか?」
その問いかけに首を横に振った。
否定を返したのではなく分からないのだ。
本当にあの瞬間は本能的に抵抗を示したから、もしかした彼の言うとおりに叫んでもいたのかもしれない。
分からない。
断片的に捉えた映像しか浮かばないのだ。
「わか・・・らない・・・、わからない・・です。ただ・・・犯人が逃げた方からあなたが・・・」
「それは、多分犯人らしき男が丁度私が歩いてた通りに抜けてきたから。直前に争う声もしてたし疑問に思って路地に入ったらあなたが逃げてて、」
「・・・・・そんな・・・そんな都合いい話・・」
「誓って、・・・私じゃないです。・・・何か犯人の特徴は記憶してないですか?」
記憶してたら・・・。
こうしてあなたを疑って、不安に震えて座り込んでたりしない。