夫婦ですが何か?Ⅱ
そしてその相手は確認しなくても予想はつくのだ。
取り出して表示を見た瞬間だけで心に安堵の日が差す事に驚きと呆れと歓喜。
同時に今一番に傍にいてほしいと感じながらも、一瞬で移動できるような超人的なヒーローではないと理解して僅かばかりに口の端をあげ応答していく。
『千麻ちゃん!?大丈夫!?何回電話しても繋がらないからっ・・』
何回も・・・、
ああ、あの騒ぎの中も着信があったのか。
そんな事を言葉から悟り、きっと着信履歴は彼の名前が連なっているのだろうと軽く口の端を上げた。
「・・・・・すみ・・ません」
『っ・・・声・・掠れてる。ねぇっ、何があったの!?大丈夫!?』
何が・・・。
色々・・・ありました。
ありすぎて・・・でも・・混乱して・・・。
確かにあったその瞬間を・・・馬鹿な私はまともに記憶してないんです・・・。
『千麻ちゃん!?』
「・・っ・・・大丈・・夫」
『じゃないでしょ!?全然大丈夫な口調でも声でもないからっ!!っ・・やっぱり今から帰るから待っーー』
「帰らないで・・・」
弾いた言葉に息を飲んで彼が沈黙したのが分かる。
きっと表情は困惑と驚愕。
多分、『今すぐ戻って』と言われることを頭に描いて信じて、今まさに動こうとしていたのでしょう?
そして弾いた私も一瞬は自分の言動に『アレ?』と返したくなる。
でも、本気なのです。
帰って来ないで・・・。
戻ってこないで。
本当は今すぐにでも駆け付けて抱きしめてほしいと感じるくらい弱っているけれど。
つまらない蟠りも、意地っ張りな憤りも、どうでもよくなるくらい傍にいてほしいけど。
「・・・あなたと私は今複雑な喧嘩中で・・・・、そんな中で帰宅したら何事かと両親が心配します」
『・・っ・・そんな事言ってる余裕あるの!?俺が今の千麻ちゃんの状況分からないくらいに馬鹿だと思う!?第一声で、・・っ・・最初の電話の間の息遣いだけで千麻ちゃんが追い詰められて弱ってることくらい嫌ってほど感じて俺の方がどうにかなりそうなのにっ!』
私の言葉が本心なら、彼のこれも本心だ。
言葉の通りに今あなたは自分に何かあったみたいに・・・、自分に何かあった以上に焦って取り乱してその動悸に苛まれているのでしょうね。
それを承知で・・・私もさっきの言葉を告げたのですよ。