夫婦ですが何か?Ⅱ
『・・・・もう・・落ち着いた?』
「・・・・大丈夫です。・・・不安にさせてしまってすみません」
『ん・・・、でも・・・千麻ちゃんが無事なら良かった』
「私は大丈夫です。・・・・もう、親孝行しに戻ります」
『うん・・・じゃあ、明日、』
「・・・・おやすみ・・・なさい」
最後に軽く笑ったような彼の息遣いを感じ、それを最後に通話を切った。
夜風がふわりと吹きぬけて、中途半端な長さの髪が流されゆっくりと重力に従順に元に戻る。
ぼんやりと耳に当てていた携帯を下に下ろすと、何だか今までのすべてが夢だったみたいで。
全部・・・なかったことだったらどれだけ楽だったか。
でも、何もなければ自分がこんな道端で座りこんでいる筈がないし、すぐ横で心配そうに私を見つめる隣人も存在するはずないのだ。
電話の最中もしっかりとその場に留まり身を案じて待ってくれていた姿。
散々失礼な疑いや言葉を連ねた私なのに。
そう記憶の回想に自分の失礼極まりない姿を浮上させると、ゆっくり彼に体を捻って深々と頭を下げていく。
「大道寺さん?」
「・・・失礼な態度や言動・・・先ほどの疑惑・・・大変失礼いたしました。・・・取り乱していたとはいえお礼も申しあげていなかったかと、」
「ああ、いいんです。自分の身に危険が迫った直後で冷静になれる人なんていないでしょう。何はともあれ、あなたが無事で何よりですよ」
「・・・ありがとうございます」
「・・・立てますか?」
気にするな。と微笑みながら差しのべられた手。
昨日までであるならこの笑みに不快感もって嫌悪の態度で接していたであろうに。
今程・・・安堵感じる物であると思ったことはない。
本当の意味の悪意はない。
酷く・・・安心する。
そう感じて口の端を上げ頷くと、差しのべられた手に指先を絡め再度足に力を込めると支えながらではあったけれど自力で地面に足をついた。
視界がまともだ。
普通に立って見つめるいつもの景色。
やっと・・・平常の自分に近づいたとゆっくり息を吸って吐くと口の端を上げて新崎を見上げた。
「・・・・ありがとうございます」
「いえ、むしろ・・・あなたの皮肉なしの笑顔が見れたので。疑われてみる物ですね」
「・・・・なんか、おかしくないですか?それ、」
「結果オーライです。とりあえず・・・待ち人がいるのでしょう?帰りましょうか?」
「・・・はい、」
笑って向けられるおかしな言葉に、彼なりの気遣いを感じて感謝してしまう。
少しでも気を紛らわせてくれたのだろう。