夫婦ですが何か?Ⅱ
それでも私の返答を待つでもなくクスリと笑った彼が頬をくすぐるとその身を返して扉に向かった。
ようやくの出勤。
色々と付箋を残しての。
ガチャリと扉を開けその身を出しかける姿を何となく見つめていれば不意に思い出したかのように彼が口を開く。
「隣・・・誰か入ってくるみたいだね」
「・・・ああ、さっきそんな話をお隣さんと・・・」
「っ・・・あいつと話したの?」
「・・・・隣人ですし。・・・むしろあいさつ程度に会話しますよ?」
当然でしょう?と切り返せば驚愕の後に深く溜め息をついた彼が、やっと出しかけた体を逆戻りで私に迫ると威圧する。
至近距離に寄った顔、その視線は軽く鋭い。
「・・・・あいつには油断しないで」
「・・・・はっ?」
理由を求めての反応だったのに、ただ一言警告のように私に言葉を残すとひらりとその身を外に出してしまった彼。
無情にもパタリとしまった扉の音を耳にしばらく小さな困惑で不動になってしまった。
『油断しないで』?
隣人であってそんなに接点のないあの人に?
どれだけ独占欲爆発しているんだあの男。
よく理由の分からない彼の独占欲に溜め息をつくとゆっくりその身をリビングに戻していった。
夏の日中は9時にもなると熱気が激しい。
窓から差し込む日光の熱で外気の温度を予想して苦笑い。
起きてきてよちよちと足取りおぼつかないながらも歩き回っている翠姫を見ながら掃除まで済ませて暑さに溜め息をつき。
そんなタイミング図ったように鳴りだす洗濯終了のブザーに、鬱陶しいと着ていた服を一枚だけ脱ぎ捨てた。
彼が見たら無防備だと非難しそうなキャミソールにデニムパンツ姿。
でも誰が見るでもない家の中だ。
こんな家屋の中で警戒働かせても仕方ないと無防備なんて意識も皆無に等しく、洗いあがった洗濯物を取りに洗面所に向かう。
そんな自分の後を言葉にならない声を発しながらにこにこと突いてくる翠姫に時々微笑んで。
相変わらず綺麗なグリーンアイは彼にそっくりだと思ってしまう。
足元に小さな気配を感じながらカゴに洗濯物を移すと『行くよ~』と声をかけてリビングにゆっくり歩き出した。
ひよこのように何が楽しいのか笑いながら付いてくる愛娘にキュンとしながらリビングに戻り、よちよち歩きの翠姫に彼お手製の黒ウサギの【永遠】を手渡しベランダにその身を出す。