夫婦ですが何か?Ⅱ




暑い。


瞬時に寄った眉根と体に絡んだ熱風。


うんざりしながら太陽を睨みつけ、さっさと済ませようと洗濯物を干し始める。


じりじりと紫外線の強い日光が露出した肌に焼き付いてきて、脱がない方が逆に痛みを感じなかったかもしれないと若干の後悔も浮かんで。


でも洗濯物は早々に乾きそうだと、主婦らしき意識に転換して前向きな家事をこなす。


あと数枚干せば完了だというタイミング。


不意に耳に入り込むガタガタと賑やかな音に意識を走らせれば、響くのは例の空室の隣から。


ああ、引っ越し作業開始か。


そんな事を思いながら残りの数枚を干しあげると、フゥッと息を吐いてから涼しい室内にようやく舞い戻った。


だけども瞬時に無情な現実を捉えて唖然と不動になる。


室内に戻った視線の先に捨てようと思って忘れていたごみ袋の存在アピールに慌てて時計に視線を走らせて。


ギリギリで間に合う。


部屋に危ないものはない。


一応視線で翠姫に危険及ぶものがないか確認をすると足早にごみ袋を掴んで玄関に走って行く。


弾丸の如く飛び出して、手早く施錠するとエレベーターホールに駆け込んで、まさに今閉まろうとしている扉に腕を滑り込ませて必死の阻止。



「待ってっ、」



言いながらなんとか開いた扉から滑り込み、その顔を上げれば絡んだのは驚愕の表情と対峙した。


でも見慣れている。


むしろ・・・・数時間前に会った。



「あっ・・・・すみません」


「いえ・・・、」



一応無理矢理な引き止めに謝罪を響かせれば、簡単な一言で切り返してきたのは隣人の男。


名前は・・・・榊(さかき)さん・・・だったっけか。


朝のランニング姿とは違い、そしてどこか過去の彼を彷彿とする黒いパーカーとパンツに身を包んだ姿。


身長は長身で恭司といい勝負かもしれない。


表情はいつもやる気のない無表情で、雛華さんのように長めの黒髪でその目を軽く覆っている。


でも・・・顔は悪くない。


今はエレベーターの壁にその身を寄りかからせて、小脇にタブレットを抱えている。


一体この人は何をしている人なのだろう?


ニートとは考えずらい。


このマンションはそこそこいい値段する物でしかも上階に来れば割増だ。


そこに一人暮らしと言えど生活をしているわけだからそれなりの収入ある筈なんだけど。


平日の昼間にこのスタイル?


もしかしたら今日は休日とか?


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