夫婦ですが何か?Ⅱ
こういうさりげない部分に母なら恥ずかしほど過剰反応して感謝を示すのだろう。
でも私はただ受け取って静かにそれを飲み始め、少しでもカフェインが強く作用することを願う。
「・・・・自分から言わないことを追及するのは性に合わないが、」
「ん?」
「昨日・・・何かあったか?」
「・・・・・・・夫が他所の女宅から半裸で登場したけど」
「それは知ってる」
「うん、この後それについて戦争予定だから」
「まぁ、程々にな」
そうして再び親子間で沈黙になる時間。
一瞬は戸惑った父の問い。
こうして的外れな返答をしたけれどあえて追及してこないのは父らしいと思う。
そして父が本当に問いたかったのは私が買い出しから戻った時の非常についてだったのだろう。
父は割と鋭い人だ。
でも感づいた事にそうそう追及して探りを入れるタイプでない。
本人が語るまではなるべく触れないようにする人で、そんな父が珍しく問いかけてきたのだからそれだけ不安を与えていた事になるのだろう。
だとしたら・・・さっきの誤魔化しは父の誠意を踏みにじったのだろうか?
少し心苦しい胸の内に苛まれて、私を思って買ってきてくれたコーヒーを口にするのも躊躇われる。
でも、言ったら今以上の不安を抱えさせて帰らせる事になる。
だったら、このまま帰ってもらって、何事もなかったと次にも顔を見せればいいのだ。
そう納得しコーヒーをごくりと飲み干すと腕時計を確認して周りを見渡す。
もう少しで乗車時間なのにあのお気楽な母はいずこへ行った?そんな感じに目を細めて見渡して、遠く小さくその姿を捉えると安堵の息を吐いて立ち上がる。
「・・・・まぁ、お前の事だから結局は何とかするんだろうが、」
「・・・・」
「何かあってからじゃ遅いんだからな、」
「・・・・知ってる」
「俺や母さんは勿論、・・・茜くんや翠姫も心配する」
「・・・・分かってる。大丈夫だから、」
「なら・・・また次の機会に。・・だな、」
話は終わりだとゆっくり立ち上がった父が飲み上げたカップを近くのゴミ箱に捨てたと同時。
嬉々とした表情の母が戦利品の数々を抱えて合流して、久々の家族の逢瀬の終幕。
ホームまで見送ってその頃には目を覚ましていた翠姫と一緒に窓越しに手を振る母に軽く手を上げて。
父は相変わらず無反応での別れの姿。