夫婦ですが何か?Ⅱ
父らしいと思いながら走り去る電車を見送って、一つ小さな嵐の解決だと息を吐くと時間の確認。
もうすぐ昼になるという時間。
駅で何か買ってから帰ろうかと思案して、さっきはさほど興味もなかった売店の数々を覗き込んで歩いて行く。
そうして数店舗を歩き去って、不意に思考がめぐったのは昨日の事。
僅かばかりにも世話になった隣人の新崎。
いつかお礼を返すとは言ったけれど、やはり形としてすぐに小さくでも返しておきたいと、立ち並ぶ銘菓の店舗に視線を走らせる。
そんなに高くない、小さな物であるなら嫌味でないだろう。
そう判断し、手ごろで万人受けしそうなお菓子を選び購入すると、多少静かになった自宅であるマンションに帰路を急ぐ。
いよいよ、本音をぶつけ合う時間にカウントダウンだと気を引き締め、タクシーを降りるとエントランスに向かう。
そろそろ連絡を入れるかと、携帯をとりだすと彼の番号からメール画面を引用し両親の帰宅を連絡網。
言葉短くそれを送信するとポケットに戻してエレベーターのボタンを押した。
ゆっくりと下降してくる数字は他に止まる事なく自分の目の前まで移動して、静かに開いたそこは誰もいない狭い空間。
気を楽にその中に乗り込めばタイミングよくポケットで震えはじめた携帯にその手を伸ばし、応答したと同時に分厚い扉が静かに閉まった。
「もしもし、」
『あ、千麻ちゃん?俺もう帰宅していいのかな?』
「一戦交える覚悟があるのなら」
『フハッ・・・あるある。もう隠しっこなしで愛を深めましょうか?』
「溝を深めないようにご注意くださいね」
『愛してるハニー』
「言葉の武器研ぎ澄ませて待っててあげるわダーリン」
嫌味な言葉で切り返せば、クスリと笑った彼の声を最後に通話の終了。
その間に高層と言える高さを上り詰めたエレベーターが住まいのフロアの数字を示し。
静かにその動きを止めると決まったタイミングでドアを開いて外気を取り込んでくる。
一瞬は帰宅の感覚に安堵し、次の瞬間には動きだそうとしていた体を半歩引いて緊張に染まる。
開いたドアの向こうにエレベーターを待って立っていたのは榊で、今日もいつもと似たような服装や気配で力なく存在する。
それでも開いたドアに意識移し顔を上げ、私という存在に気がついた瞬間にその双眸を大きく見開く。