夫婦ですが何か?Ⅱ
内心酷く動揺しつつ、彼の隙を塗ってエレベーターから抜けようと動きだし。
不審に思われようが部屋に駆け込もうとその足を駆け足にするべく踏みしめた瞬間。
思わぬ力で引き戻され、ままならないバランスに翠姫だけは守らねばとしっかり抱きしめる。
背中がトンと壁に当たり光を遮るように私の頭上で腕をつける男。
彼にこうして見下ろされるのは何度目か。
でも以前の様な余裕の心持で対峙することも出来ず、強引に引き止められた時間が昨日の夜の瞬間に類似して心底怯む。
掴まれている腕が震える。
自分より明確に力の差のある男に見下ろされるのが今は酷く恐い。
「・・・・震えてる。・・・・やっと、それなりに危機感持つようになりました?」
「・・・っ・・・離して・・・ください、」
「・・・・・確認したいことが・・・あって、」
心臓が激しく跳ねあげて痛みを残す。
そして時々確認するように彼の腕を見てしまう。
今日も薄手の長そでスタイルで、服の下は明確でないけれど昨日は確かにその腕を痛めていたように感じる。
私が噛みついた・・・犯人の腕と類似する個所を。
相変わらずの無表情で見下ろす姿は他者から見たら妖艶と称せるのだろうか?
でも疑惑強い私には今はただ恐怖の塊にしか感じられなくて、今にも下手な事をしたら何かされるのではないかと睨まれた蛙の如く動きが取れないのだ。
今は無理だ。
何より・・・翠姫がいる。
腕の中で何も分かっていない翠姫が私の髪で遊ぶのをギュッと抱きしめ対峙する男を見上げる。
慎重に、威嚇まではいかないように、でも怯んでもいないようにまっすぐに見つめ返して。
「昨夜・・・このマンションを出た後に何かありました?」
「・・っ・・・あなたには・・・・関係のない事だと、」
「まぁ、・・関係ないですね。ただの俺の好奇心・・・、
・・・・一体、あなたがここまで怯えるほどのどんな事態があったのかと、」
ニッと上がった口の端に背中に何かが駆け上って、鳴り響いていた危険注意報が警報に変化する。
どこかあの事態を分かっているような口ぶりに、やはりこの男が犯人なのではないかと疑惑が強まる。
こうして遠回りな質問から攻めていき、知りたいことをさりげなく確認しているのではないだろうか?
昨日、自分を襲った犯人の顔を見たか見ないか。