夫婦ですが何か?Ⅱ
核心をついた問いをこちらからする?
いや、それでこの人が犯人であった場合翠姫も危険だ。
だとしたら今は問われた質問を濁しながら返答してこの場を回避した方が得策だろう。
「・・・・・ちょっとした・・トラブルに巻き込まれただけです」
「【ちょっとした】・・・で、こんなに気丈であったあなたが怯むものなんですか?」
「・・・・・・すみませんが、・・私にも予定があってあなたの好奇心にお付き合いしている暇はないのですが、」
言いながら、『もう、いいだろう』とばかりにその身を捻ろうとすれば当然逃がすはずのない男に引き戻され、さっきより至近距離から見下ろされどこかその目の鋭さに畏怖して息を飲む。
「・・・・・何か・・・俺に疑いを持っているのならそれは誤解です。俺はただの傍観者で時々警告を与えてるに過ぎない・・・」
「・・・・・」
「でも、俺がいくら真実めいた言葉を告げても疑惑が強いうちは信用度も薄いでしょう?それに・・・・俺の介入を許さない奴らの手助けなんて自ら志願してやる物か・・・」
小さく舌打ち響かせその表情を曇らせた男は【奴ら】と称した相手を思い浮かべての反応だろう。
でも、分からない。
この人の言わんとしている事も。
明確に宣言したのは自分が疑いのかかる人物ではないという否定の言葉。
でも彼自身が言ったように鵜呑みに出来ないのは、まだまだ疑わしき点がいくつも残されているからだ。
混乱する。
これだと答えの端を掴んだと思ったらするりとその手を離れてしまって。
更に複雑に絡んでいく糸を解く方法があるのかどうかも分からなくなってくる。
誰をどこまで信じて疑っていいのか。
「警告です。・・・・あなたは色々と間違えてる。信じるべきものと、そうでないもの・・・・。
疑うべきは・・・親身で無害な存在かも・・・」
「・・・・・・だ・・れ・・」
思わずその答えを求める様に問い返してしまった。
この人もまだ疑わしき対象なのに。
その答えを聞いてしまえば、更に疑惑のタネを増やしてしまうかもしれないのに。
問われた事に妖艶に微笑んだ男が答えを弾くべく唇を動かして、その一瞬に酷く緊張した瞬間。
「昼間から他所の奥様を壁に縫い付けるのはよろしくないですよ?・・・子供も見てますし」
響いたのは今までその場に存在していなかった男の声で、言わずもがなもう一人の隣人の新崎だ。