夫婦ですが何か?Ⅱ
でも、見慣れているわけでもないけれど初めてでもない。
確実に記憶のある姿に社会マナーの如く。
「・・・おはようございます」
「・・・・・・・・・おはよう・・・ございます」
相変わらず、たまにしか見かけないけれど生気を感じないなぁ。
そんな感想抱いて対峙した女性を見つめてしまう。
そのやる気のないような表情はさっきの彼といい勝負かもしれない。
すっぴんに眼鏡は何となく同類感を感じてしまうけれど。
長い髪は櫛を通されることなく癖がついた色素の薄い細そうな髪。
部屋着なのかロングのパーカーワンピースは何やら所々鮮やかな色が付着していて。
気がつけばその手にも色々なインクなのか絵具なのか。
そんな彼女も同じ階のもう一人の住人。
滅多に顔を合わせることはないけれど。
そして声を交わすことも珍しい。
そんな彼女に何故か今見つめられている現状。
どうやら私より先にごみを置いて戻ってきたらしく、これからそこに向かおうとした私と対峙した。
それだけの筈なのになぜか足止めするように見つめてくる姿に変な緊張感。
私は何かしただろうか?
そんな疑問を抱きながら彼女の威圧を受け流していると。
不意に彼女の視線がエントランスに移り、そしてすぐに私に戻るり響いた声。
「・・・・・あの人には・・・気をつけた方がいい」
「・・・・・あの人って・・・・榊さん・・・ですか?」
人物明確に彼女が思う相手の名前を響かせると、もう声は発さずに頷いた姿がゆっくりと私の横をすり抜ける。
そしてエレベーターのボタンを押すと寝不足なのかあくびを一つ。
もう、立ち去っていいのか真剣に迷い。
それでも翠姫が待っていると意識が走ると足早に一歩を踏み出した。
直後、
「無防備・・・」
ポツリと落とされた言葉に振り返れば、彼女はその身をエレベーターに滑り込ませている瞬間で。
言葉を返す間もなくまた1人にされた空間。
そしてこの数分に自分に貼られた【無防備】のレッテルに複雑な感情で苦笑いを浮かべると、ゴミを素早くステーションに置いて人目を気にしながらエレベーターに乗り込んだ。
部屋に戻ったら脱ぎ捨てた服を一番に着よう。
さすがに身に染みた【無防備】を噛みしめエレベーターに身を任せた。