夫婦ですが何か?Ⅱ





自分が急いでも変わらぬエレベーターの速度。


無防備と散々に受けた肌を今更隠すように腕を摩って覆ってみる。


そして内設されている鏡を捉えて自分を客観的に確認してみてもどうも腑に落ちない。


いや、無防備は認めるけれど、それに惹かれるほどの自分の魅力は理解できないのだ。


子連れの32歳なのに。


そんな女の露出にそこまで過剰反応が来るとも思っていなかった。


でもこうして同じ階に住む隣人たちが口々にそれを向けてくるのならそれが答えなのだろうと渋々頷く。


そんなタイミングに丁度到着音が響いてゆっくりと開いた扉から歩きなれたフロアに身を出す。


少し時間を食ってしまったけれど翠姫は大丈夫だろうか?とわずかな懸念を抱いて小走りに部屋に向かうと。


角を曲がってすぐ捉える自宅の扉。


でもその扉の前を遮るように立っている後姿。


明らかに男の人の後ろ姿に眉根を寄せ様子を伺うように接近すると、くるりと振り返ったその姿と視線が絡む。


この人とは初対面。


だけども視線が絡んだ瞬間に柔らかくにっこりと微笑んできた姿は大人の男を思わせる。



「こんにちは」


「・・・こんにちは、」


「引っ越しのご挨拶に伺ったんですが・・・、お留守だったみたいで」



そう言いながら【粗品】と書かれた物を手渡され、その詳細を理解したように隣の部屋を見つめて納得した。



「ああ、・・・お隣の、」


「新崎(にいざき)と言います。急な仕事の移動で越して来ましたがまたいつ移動になるのか分からないので、」


「・・・大変ですね」



思ったままの感想を述べれば苦笑いで『仕事ですから』と返したその人はまともそうだ。


会社勤めなのか好感と信頼持てる短めの少し茶色い髪と落ち着いた雰囲気示す笑みは女性に好かれそうだと勝手に推測する。


でも左手に指輪はない。


一人身だろうか?と下世話な予測までしてしまっていれば、少し戸惑いながら彼の視線が泳いで私を見つめてくる。


何だろう?


と、すっかり抜け落ちていた自身の姿に我に返った瞬間には3度目の、



「余計なお世話かもしれませんが・・・もう一枚・・何か羽織られた方が・・・」


「っ・・・自覚してます。失礼いたしました」


「いえいえ、目の保養になりましたし」


「すみませーーーー?」



ん?


なんか・・・爽やかさには不似合いな一言を発した?


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