夫婦ですが何か?Ⅱ
静かになった空間。
私を抱きしめ不動になった彼に特別声をかけることなく頭を撫でて。
いつまでこうしているのかと疑問に思えど不快ではない時間。
むしろ自分だけの特権の時間だと軽く口の端をあげるとほぼ同時。
「・・・・・千麻ちゃんを・・・愛してる」
「・・・・・・知って・・・ますよ?」
不意に沈黙を破った彼の声が響き、その声音に今までの様な軽い調子を感じられないことに自分の心持もそれに切り換える。
身構えるように意識して、未ださっきの姿勢を保って私と視線絡めずな抱擁を続けている彼を見下ろすと。
「本当に・・・・・別れてる間もその感情が揺らいだわけじゃないんだ・・・・」
「・・・・」
ああ、そうか・・・。
言わんとしたいことが分かった。
彼の懺悔したい内容を理解すると小さく息を吐き、彼の頭を包み込むように抱きしめ耳元に唇を寄せると囁いた。
「言って・・・・」
全て黙って聞き入れますから。
あなたの思うままを懺悔してください。
そんな心情での抱擁と言葉。
そうして空気を作り上げて促せば静かに息を吸った彼が息に言葉を乗せ吐きだしていく。
「・・・・・・あの時の感情なんて・・・どっちがより辛いかなんて比べるべきものじゃないんだ。
確実に・・・千麻ちゃんの方が精神的にも身体的にもダメージが大きくて・・・・、
でも・・・俺も・・・ボロボロで・・・」
「・・・・はい、」
「俺は・・・弱くて・・・、強くあろうとする程もろく崩れていって・・・・、細い細い・・・一本の神経で必死に保っている様に日々を過ごすのがやっとで・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・・辛かったんだ。
千麻ちゃんを失った生活が、当たり前にあった姿が幻だったみたいに消えて、なのに至る場所に残像ばかり残って・・・、
辛くて、辛くて、辛くて・・・寂しくてっ・・・・・・・・
いっそ・・・って、」
言葉を綴るたびに震えていく彼はその心を過去のあの心境にスリップさせていたのだろう。
そしてその言葉を聞き入れる私も影響受け震えが移行する。
違う・・・、移行したんじゃない。
本当に畏怖したのだ。
彼が噤んだ言葉の続きを理解して。
理解した瞬間にゾッとして鳥肌立ち、知らず知らずに堪えるように息を止めた程。
いっそ・・・?
あなたが本当は弱い人だと私は嫌って程知っている。
だからこそ彼女を失ったあなたが今話したような状況に落ち込むのを防ぐためにあの時隣り合う事を選んだのだから。
なのに・・・結果私がその状況に彼を落としこんでいた。
いっそ・・・、
いっそ・・・、
「自分も・・・・残像の一部にしてしまいたかった・・・」
言われた瞬間に恐怖が達し、現状の話でないのに守るようにきつく彼を抱きしめ存在を確かめた。