夫婦ですが何か?Ⅱ
しばらくお互いの呼吸を整えるようなインターバル。
少しばかり上がりすぎてしまった感情を落ち着けて、先にそれが整ったらしい彼がゆっくり息を吐くと静かに続きを語りだした。
「莉羽ちゃんや、孝太郎とはね・・・・千麻ちゃんと契約婚する前は結構交流持ってたんだ・・・・、一緒に飲んだりして」
「・・・・知りませんでした」
「うん、まぁ、千麻ちゃんと結婚してから俺千麻ちゃん繋ぎとめることにばっか必死だったから、」
クスリと笑ってあの契約婚の事を回想しているらしい彼。
確かに、家でも職場でも別にそれを義務付けられていたわけでもないのに私と彼は常に一緒にいたと思う。
つまりは私と結婚した事によって友好の邪魔をしていたんだろうか?と一瞬は懸念するも、あの気まぐれな面々の性格をすれば集まりも気まぐれで気分によっての物だったのだろうと納得させる。
今は彼の懺悔の邪魔をするような言葉は挟みたくない。
そう思った瞬間、
「・・・・・たまたま・・・見られてたみたいなんだ」
「・・・」
「俺が・・・ヘタレにもフェンスに足をかけた瞬間を莉羽ちゃんに、」
「・・・・・」
「その日から・・・毎晩・・・気になって見張って・・・また、同じようなタイミングが訪れた時に声をかけたって、」
「・・・・声を・・・かけてくれて良かったです」
「・・・・・その日からね・・・、莉羽ちゃんに頼まれて絵のモデルになってたんだ・・・」
「・・・絵・・・スケッチとか・・・そう言う類の物ですか?」
「うん、莉羽ちゃんは絵描きさんなんだよ。で、孝太郎も同じ美大出ててあいつはプログラマーというか、個人で広告デザインの仕事やってる」
「成程・・・それで彼は在宅なんですね」
ようやく謎解けた隣人の職業。
個人と言えど相当儲かっているのだろう。
マンションの一室購入してるくらいだし。
そして彼女の職業?も知ってしまえば納得し思いだすことがある。
いつぞやに遭遇した時にその手に付着していた絵具らしき物を私は確認していて。
でもまさか絵描きなんて職業は全く浮上せず、それでも判明した事にもう一つ疑問の解消。
「もしかして・・・・、昨日の訪問も?」
「うん、・・・とりあえず順を追って過去の話に戻すとね。・・・莉羽ちゃんの機転で毎晩絵のモデルして、でも正直言うとその時の記憶って曖昧なんだよね」
「曖昧?」
「なんて言うか・・・ただぼんやりと・・・俺にとっては苦痛な自室での時間を避ける為だけの避難の時間で。その為だけにただ莉羽ちゃんが指示するままに座って無心でいただけだから」
抜け殻・・・。
ただ意味もなくそこに存在していたと。