夫婦ですが何か?Ⅱ





でも、いささかやりすぎだったかもしれない。


今日会ったばかりの相手に対して。


そんな反省を心でだけして視線を扉に向けていれば、



「ふっ・・・はは・・・」



笑われ・・・た?


明らかに笑った響きの声に反応して振り返れば、隠すでもなくクックックッと笑う姿を捉えて無言で見つめる。


ここは『失礼!』だと怒るべきところだろうか?


そんな疑問に反応を遅らせていると先に言葉を発したのは彼の方で、



「成程、あなたの無防備はそのはっきりとした意思からも来ているんですね」


「・・・・その分析は・・・セクハラですか?」


「とんでもない。一見解です」



にっこり。


さっきみたいに可笑しくて笑うというよりは言葉を肯定するような笑みに無表情で対峙してからくるりと視線を扉に移した。


どうもこの人は苦手の範囲だ。


でも取り乱したりするような苦手さじゃなく何ていうか・・・。


【副社長】に奉仕した5年を思い出すんだよな。


彼のそれはもっと露骨に意地の悪い笑みで向けられていた物だったから、今こうして傍にいる存在のそれは紳士的と言えるのだろうか。


でもどちらにせよ好ましくはないし・・・・、そんなのは彼だけで足りている。


しかもたかだか隣人関係なだけの男に自分を解釈してほしいとも思わず、話は終わりだと示すように顔を背けたわけだ。


そんな他愛のないやり取りの間にしっかりと可動していたエレベーターは動きを止める。


ふわりと風を巻き込みながら開いた扉からスッとその身を出して広いエントランスを歩きだした。


追って響く靴音は少し小走りに響いてから速度が落ちた。


意味するのは先に歩きだした私に距離を詰め寄ってから平常の足取りになったのだ。


何故?


疑問に思えど振り返る気もなく無言で靴音響かせ歩いていると、相手はどうやらまだ私に関わりたいらしい。



「もしかして・・・怒ってますか?」


「・・・・特別には」


「もし不愉快に思われたのなら謝りますが・・・」


「言ってしまえば・・・愉快でも不愉快でもなく無関心と言ったところでしょうか」


「・・・・【無関心】」



あっ、またさすがにいきすぎた言葉だっただろうか?


反復された自分の発した言葉に愛想の皆無を感じて心で溜め息をついてしまった。


ぽつりと呟いた後の無言もそれを非難してくるようで、苦し紛れにも似た感情で歩みは止めず。


でもフォローはすべきかと後ろを振り返った瞬間。

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