夫婦ですが何か?Ⅱ
大人しく組み敷かれてはみたものの冷めた眼差しで見つめれば、それが痛いと言うように眉尻下げる彼の必死の言い分。
「あの・・・、ちょっと色々と複雑で、どう説明していいのか分からないけど千麻ちゃんが思っているような『誰でもいいから気持ち良くなりたーい』的な関係じゃないから・・・」
「はぁ、別に私もそんな事は言ってませんが」
「目が・・・物凄くそう言っている気がする」
「ああ、すみません。生まれつきこの目力ですので、不満があるのでしたら実家の両親にお願いします」
「お願い・・・ご機嫌損なわないで!?その・・・・俺の初体験は成行きと気まぐれで失ったと言いますか・・・」
どんな成行きと気まぐれだよ?
そう突っ込みを入れようか迷って、でも本気でどこか困ったように眉尻下げる彼を見てなんとか飲み込んだ。
確かにこの話題を振ったのは私で、聞きだしてその内容に不信感抱くものであったとしても機嫌を損ねるのはあんまりかもしれない。
それに過去の出来事。
夫婦だからと言って深くまで聞きだしていい彼のプライベートじゃない。
そう判断すると溜め息交じりに彼の頭に手を伸ばして、髪を乱すように撫でくりまわして最後に抱きしめた。
「えっと・・・千麻ちゃん?怒ってない?」
「別に過去の事で怒るも何もないでしょう」
「・・・莉羽ちゃんとの事は断髪したじゃん・・・」
「あれはその関係性というよりはずっと秘め事にされていた事実に行動したまでです」
「うん・・・ごめん・・ね?」
「だから・・・その事もすでに解決済みでしょう?怒ってませんから・・・・・、今は・・・私の夫ですし・・・」
何の問題もない。と、言い聞かせるように口にしたくせに、最後の部分は少し力なく言ってしまったかもしれない。
それに気がつけば自分が照れたようで異様に羞恥心感じ眉根を寄せての必死の誤魔化し。
でも相手は彼だ。
こういう時ほど過敏に私の弱みを見抜いて突いてくる男。
だから耳にクスリと彼の失笑を耳にした瞬間に心臓が跳ねて、すぐに耳元に触れた唇にゾクリと体が震える。
熱が・・・上がる。
「千麻ちゃんとの関係も成行きだったけど・・・」
「・・・・」
「今は最高の奥さんだよね・・・」
「それは・・・私からは測りかねる部分です」
「じゃあ、言い直す。最高です・・・」
「お褒め頂き恐縮です、」
「・・・・・動くね・・」
その要求に返事を返すより早く与えられた律動に目が眩む。
して欲しいと思っていたタイミングに満たされる欲に逆らわず溺れて。
一瞬でどうでもよくなる。
彼の過去なんて、
今、私以上に彼を知り得る存在はいないのだと、彼の今現在の熱を感じて己惚れた欲に満ちて浸った。