夫婦ですが何か?Ⅱ
ぼんやりとした視界。
明確でない空間で自分の意識も定まっていない状況でも疑問にも思わない。
そこがどこであるとか、何をしていたか、とか。
本来であるなら疑問に思うべきことを疑問とも思わず、何となくそこに存在している自分の耳に入りこむのは・・・。
『ーーーーーっーーー、ーーー!』
ん?何?
はっきり聞き取れないの。
落ち着いて・・・興奮しすぎよ。
そんな事を声を発している人物を理解して頭で思って軽く笑う。
でも、どうも夢中になって自分の興奮を語る姿が必死に私に語りかけてその勢いを緩めず。
そう・・・こういう人。
あなたが話してくれている事の半分も理解は出来ていないけれど、そうやって好きな事に我を忘れて夢中で話す姿が好きだった。
好き・・・だった・・・。
『千麻ーーー』
あ・・・
鮮明に浮かぶ・・・・。
頼りないようにも感じるけれどいつだって柔らかかった笑顔。
『 っーーー 』
「っーーーーー」
今までも開いていたつもりであった目蓋をパッとはっきり大きく開けて、代わり映えのしない天井を捉えて不動になる。
すぐに自宅の天井だと把握した瞬間に息苦しさを覚えて気がついた。
知らず知らずに胸の動悸に耐えるように息を止めていた事に。
同時に今自分さえも眠りから引き起こした自身の声を確認するように唇に触れて。
そして一抹の不安を感じながらゆっくり横に首を捻っていき脱力。
多分・・・セーフ。
その【多分】を確実なる物にする為に手さぐりで眼鏡を探してその手に掴み、乱れた髪を適当に横に流すと乏しい視力を補っていく。
耳と鼻に慣れた感触と重みを感じると、再度懸念事項の解消とばかりにその存在を振り返り捉える。
今度こそ・・・セーフ。
寝起きの目に映るのは我が家のスリーピングビューティな旦那様。
その呪いは継続中らしく、乱れた髪の隙間から長い睫毛の印象大に目蓋を下し、昨夜の扇情さを物語る布団から覗く素肌の肩のラインにうっかり見惚れる。
クソッ・・・悔しいくらいに美人な男め。
そんな褒め言葉なのか貶しているのか分からないような悪態を心でつきつつ、自分が焦るような事態には至らなかったことに心底安堵。