夫婦ですが何か?Ⅱ
良かった・・・心底良かった。
自分を眠りから引き起こした自分の声を、間違っても彼には聞かれたくなかった。
言った内容も覚えているからこそ、本気で彼に聞かれなくてよかったと暴れる心臓を宥めるように手を添える。
そのままチラリと視線走らせた時刻は朝の6時ほど。
休みだというのに早起きしてしまった体はもう睡眠を取る気はないらしい。
眠気も飛んでしまうほどの衝撃。
眠る彼を隣で体を起こして見下ろして、頭を片手で抱えると再び深く静かに息を吐いて夢の反芻。
なんで・・・。
何で今更・・・。
いや、理由は明確。
昨夜うっかり思いだしたことによって自分の脳内にその存在が鮮明に焼き付いてしまったんだ。
夢に見るほど・・・、
名前を口にしてしまうほど。
「・・・・・良かった・・・」
「・・・・・何が?」
「っ・・・・」
自分の声でも安堵を零せば不意に問われた理由に思考の停止。
それでも確実に、私に急な霊感でも身についていない限り声を発するような相手はただ一人。
今の今までしっかりと目蓋を下していた姿にそろそろと視線を移していけば、まだ眠気醒めやらぬ微睡んだ眼差しで私を見上げてくるグリーンアイと視線が絡む。
でも問いかけに特別含みもないらしく、すぐに込み上げてきたあくびで口を手で覆い目を細めた彼。
その流れでより視界をクリアにしようと思ったのだろう。
寝起きの目を擦って軽く息を吐くとようやく私に再度向く視線。
視線が戻る頃には彼の悪意は不在だと理解していた私も、焦るような心もなく平常心と心に刻んで自分の声を彼に落とした。
「おはようございます」
「うん・・・おはよ・・・、でも早いねぇ・・・」
「おかしな夢を見て目が覚めてしまって、」
「・・・俺もなんか夢見てた気がする・・・・忘れたけど」
「夢って結構起きた時には忘れてますよね」
「そうそう、寝言とか言っててもね。そいつにどんな夢見てたのか聞いても覚えてないの」
ハハッと軽い失笑を零しての彼の言葉に、含みがあるのかないのか軽く緊張し無言で見つめる。
タイムリーな話題すぎて、もしかして本当は聞いていたんじゃないか?と思ってしまうほど。
せっかく落ち着いた心臓が再び走りだそうかとするのを感じて思わず胸に手を添えてしまう。