夫婦ですが何か?Ⅱ




嫌って程意味を理解している彼が苦笑いで言葉を閉ざしたのを確認すると、今度は満足を示して口の端を上げ。


スッとその身をベッドから下すと近くに落ちていた彼のシャツを見つけてそれを纏う。


これは別に私の私物化している物ではなく、手っ取り早く近くに落ちていたそれを応急措置として着たに過ぎない。


黒のシンプルなTシャツ。


それだけを深い意味もなく身につけクローゼットに向かい始めた瞬間。



「千麻ちゃん、」


「・・・・」



引き止めるように呼んできた彼を振り返れば、ようやくその身を起こした姿が寝起きの無防備な誘惑の美を見せつけてきてうっかり見惚れる。


もう何年も一緒にいるけれどこの瞬間の彼がどれだけ作り上げた状態よりも魅力的に感じる。


普段はちゃんとセットされている髪の無造作な寝癖。


まだキリッとしきれない寝起きの表情がカッコイイよりも無垢な美の印象を強めて。


夜とは違い明確になる体のラインも自分の目を奪う。


薄らと分かる腹筋のラインとか・・・



「エロい」

「エロい」



ほぼ同時に被った声にお互いに双眸見開き見つめあって、次の瞬間には『えっ?』と同じ音を響かせ再び不動。


数回意味もなくその目を瞬かせると、先に動きを見せたのは彼の方で。


堪え切れないと言いたげに小さく噴き出し眉尻を下げた彼が前髪を掻きあげながら上目遣いに私を見つめた。



「・・・・なーんか、【彼シャツから裸】も美味しいんだけど・さ・・・。【裸から彼シャツ】なんて生着替えもちょっとドキドキしちゃったりして」


「・・・・安いですね相変わらず」


「で?千麻ちゃんが俺にエロス感じてたのは何?」


「・・・・ああ、・・・・夜とは違って・・見えるとこ細部まで確認できてエロいなぁ・・と」


「・・・・ねぇ、・・・なんかエロい・・・」


「・・・・何かおかしな誤解してませんか?」



あくまでも自分が示していたのは体のラインの事で、決して今彼が気恥ずかしそうに密かに布団で隠した部分ではない。


もしその部分を示しての言葉だとしても、何を今更・・・。



「一応、自分の言葉に補足しますとあなたが『エロい』と感じた部分にはまったく感情込めてませんから」


「あ、そうなの?なんか改めて確認とかされたら恥ずかしいなぁ。って」


「何を今更・・・むしろ、確認するまでもなくそれこそ詳細に記憶済みです」


「っ・・・逆にそれめっちゃ恥ずかしいよ!!」



サラッと気にする程の事でないと切り返した言葉はどうやら彼には更に羞恥を煽る内容だったらしい。



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