夫婦ですが何か?Ⅱ
向かい合って座っていたけれどそれまで不貞腐れたように私から外されていた視線。
でも不意にその手だけが動きを見せて私の首の後ろに素早く回ると強引すぎない力で引き寄せられ、気がついた時には頬に彼の肩が触れる。
そして耳に近く噴き込まれた声。
「ごめん、」
「・・・・・なんて言葉に反した『ごめん』の言い方でしょうね」
「・・・・だって、・・・悪いとは思ってても面白くないもん」
「・・・・・・・・・顔は・・・あなたの方がいい男ですよ」
「でも・・・千麻ちゃんの好みは元彼でしょ?」
「・・・・私を責めたいんですか?」
「違っ・・・、っ・・ごめん。分かってる・・・こんな過去の男へのヤキモチなんて無意味な上にみっともないって・・・」
自分でもその対象不在の無意味な嫉妬を理解して、深い溜め息をついた彼が私の肩に頭を預けて。
数秒の葛藤の末、
「・・・・・・でも・・・今は俺が好きだよね?」
馬鹿ですね。
それこそ愚問であるというのに。
「それ・・・あえて言わせたいのですか?」
「・・・・はい、言わせたいです」
「言わせたいと宣言した事で、私がこの後それを口にしても感じ取れる好意が半減してもですか?それこそ単なる音の響きに何か意味が?」
「・・・・・・もう、いいです、」
「馬鹿・・・」
彼の頭を支えてる肩の方の手でそっと彼の頭を撫でる。
いじけた子供の様な姿に呆れつつも嫌悪はない。
この人はこういう人。
自身が感情に素直であるから、当たり前に相手にもそれを求めてしまうのだ。
明確に『好きだ』と、愛情表現鮮明にその身で感じたい。
馬鹿だけども可愛らしい一面だと思う。
「『好き』・・・・」
「・・・・」
「なんて・・・無意味」
「・・・・だから・・いいって、」
「そんな言葉一つに乗せ切れる感情ではないと思われます」
「・・・・」
「もし・・・それでも乗せて音にするのであれば・・・・『好き』の数乗・・・。きっと・・・鬱陶しい女の出来上がりですよ?」
「フッ・・・」
「でも【あえて】・・・あなたが望むのであれば鬱陶しい女になり下がりましょう。
好きです。・・・・好き、・・好き、・・好き・・・・」
指折り3回。
数えて確認しながら『好き』だと繰り返せば、困ったように軽く噴き出した彼の息遣い。
すぐに予測立つ次の行為にすかさずTシャツの首元を唇まで持ち上げ布越しの口づけ。
当然その感触に苦笑いを浮かべた彼が理由を分かっていながら片眉を下げた。